2026年11月3日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2026年11月3日

異なる「果物」と「果汁100%」

 果糖を含む飲料の一つとして「果汁100%」のジュースが挙げられる。読者の中には、果物を100%使っている飲料ならば身体に良いのではないかと思う人もいるかもしれないが、必ずしもそうではないという。

 その大きな違いが食物繊維の有無にある。果物には、果糖とともに食物繊維も含まれている。食物繊維は吸水性が高いため、果糖の分子を吸着する。食物繊維に吸着された果糖は小腸で吸収されず、大腸までいって腸内細菌に良い影響を与える。

 一方、「果物」から「果汁」となった際に、食物繊維は粉砕されてしまっている。果糖を吸着するものがなくなり、そのまま肝臓へと蓄積することとなる。果物をそのまま食べれば肝臓が吸収する果糖が食物繊維によって軽減されるのに対し、果汁という飲料で摂取すると全ての果糖を肝臓が吸収してしまうということだ。

 こうした一部の清涼飲料水に多くの果糖が含まれていることは、以前から問題視されていた。それでも、飲料メーカーが開発・販売を続けているのは「食経験があること」を安全根拠としていると、佐藤氏は語る。

 「食経験」とは、これまでに食べたことがあり、安全に使用されてきたこと。例えば、果物は食べ続けられてきたので、清涼飲料水中の異性化糖(果糖+ブドウ糖)も安全だという理屈だ。しかしながら、果物中の果糖は食物繊維に結合しているので、異性化糖の果糖とは、異なる生理作用を有する。

 しかし、上述の通り、果物中の果糖と、清涼飲料水に含まれる果糖は異なる。佐藤氏は「自社の商品を正当化するための論理。果物の果糖と異性化糖の果糖を混同していると、飲料メーカーの言いなりになってしまう」と強調する。

以前は「糖質制限」支持者だった

 本書やインタビューを通じて佐藤氏は「糖質制限よりも果糖制限」を主張する。ただ、佐藤氏自身は元々、糖質制限派だった。

佐藤 拓己(さとう・たくみ) 1961年岩手県生まれ。東京工科大学応用生物学部教授。岩手県立一関第一高等学校理数科、東京大学農学部畜産獣医学科卒業。京都大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。大阪大学蛋白質研究所研究員、財団法人大阪バイオサイエンス研究所研究員、岩手大学工学部准教授、米国サンフォード・バーナム研究所研究員を経て現職。麻布大学獣医学部客員教授兼務。専門は神経科学、抗老化学。

 神経科学やアンチエイジングを専門に研究する中で、糖質を制限することによる健康維持や若返り効果を見出していた。自身も糖質制限によって30キロの減量に成功している。2016年5月に発刊した『体内年齢がよみがえる科学 ケトン体革命―究極のアンチエイジング理論―』(エール出版社)では、体内の糖質(ブドウ糖)が不足した際に脂肪をエネルギー源として作られる「ケトン体」の効果や可能性を指摘している。

 しかし、糖質制限は9割以上の人が継続できていなかった。「なぜ、継続できないのか」。何年も問い続けてきた。

 5年ほど前、「糖質制限は、結局のところブドウ糖制限になることが多く、ご飯を制限するといった安易な方向に流れやすい」ことに気づいた。米国人の肥満化を追うことで、果糖を制限する方がはるかに効果が高く、実生活で継続することができるという考えに今は至っている。

 「糖質制限を主張する医師の中でも、原因は果糖であると気づいている医師もいるとは思う。ただ、そうした治療が確立され、一定のビジネスになってしまっているため、変えることができない部分もあるのだろう」と話す。


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