今年のMalabar演習は、インドが、共同対処能力の構築により、戦略環境を形成しようとしていることを思い出させてくれる、重要な出来事である。非同盟主義という、外交政策上の遺産が、インドの他国との強い結びつきに、今日まで続くマイナスの影響を及ぼしている。しかし、巧妙な二国間主義と積極的な多国間主義の組み合わせにより、インドは、地域安全保障の守護者となり得るし、インドは、そうなるに値する国である、と述べています。
* * *
筆者のAnkit Pandaは、プリンストン大学の公共政策大学院(ウッドロー・ウィルソン・スクール)卒業、同大学で、国際危機、安全保障、技術政策、地政学についての研究員を務め、現在はDiplomat誌の編集者を務めている人物で、アジアを頻繁に訪れ、インド、マレーシア、日本に居住歴がある由です。
論説は、今般のMarabar演習に焦点を当て、インドが、中国の威圧的行動を受けて、非同盟主義から多国間主義的立場に徐々に変化していることを示し、インド洋の海洋安全保障で指導的役割を果たすことを期待した、至って常識的な内容です。戦略環境から来る必然性に、モディ新政権の新しい外交方針が加わって、そういう方向性は加速されることになるのでしょう。
Malabar演習は、1992年以来米印間で行われている軍事演習で、インドの核実験により一時中断していましたが、2002年以降再開され、2007年には初めてインド洋外の沖縄沖で日本も参加して行われています。また、その間豪州、シンガポールも随時参加しています。
2007年に既に、沖縄沖において日米印の海軍演習が行われていたことの背後には、第一次安倍内閣の姿勢、特に、「自由と繁栄の弧」を主張した麻生外相、幹事長の影響があったと推察されました。そして、それが今年復活されたことに、安倍―麻生総理の思想の一貫性が見られます。
RIMPACが、中国の参加を許して、その意義が、仮想敵を意識しない、透明性確保のための訓練に変質しつつある可能性がある今、Malabar演習、さらに、論説が提唱している、インド主導の、従来のRIMPAC的な、インド洋における大規模演習の意義は大きいと言えるでしょう。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。