2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月15日

 インド太平洋地域を考える上で、米国の政策担当者は、距離的制約と予算的制約という2つの問題に直面している。その点、米海軍のプレゼンスを西オーストラリアに展開することは、世界で最も成功している二国間同盟を、効果的かつ余裕のある形で拡大させることになろう、と論じています。

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 この提案は、現在の米豪同盟の進展状況と将来的な戦略環境の変化を踏まえれば、有効かつ現実味のあるものと言えるでしょう。豪州パースに第2の空母打撃団が配備されれば、米海軍のパワーの増強につながるので、基本的には歓迎すべきです。

 本論説も指摘しているように、現在、米空母打撃群の前方展開拠点は横須賀のみで、それ以外の母港はすべて米本土にしかありません。横須賀は、冷戦期から米軍にとっての戦略的要衝であり続けてきました。しかし、今や、中国の短・中距離ミサイルや海空戦力からなる接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力の増強によって、沖縄はもとより、横須賀の脆弱性も徐々に高まりつつあります。もちろん、それを理由に横須賀から撤退すれば、日米同盟の信頼性に関わるので、米海軍の横須賀におけるプレゼンスは、維持することが重要ですが、パースへの配備は、横須賀の脆弱性を補完する意味があるでしょう。

 戦力の分散という観点からは、フィリピンのスービック海軍基地の再活用も進められていますが、紛争に対する緊急展開や人道支援・災害救助(HA/DR)の拠点としては有用であるとしても、対中有事となると、空母の拠点とするには第一列島線に近すぎ、中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの射程圏内にあるため、脆弱性に変わりはありません。

 その点、西オーストラリアは、中国のA2/AD圏外にあることから脆弱性が低く、平時の対応を考えても、東南アジア・インド洋正面への展開には申し分ない位置にあると言えるでしょう。

  
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