「東京では、質の高い食材が簡単に見つかる。そして、食材を提供する漁師から調理するシェフ、お客さん自身を含めて、すべての人が完璧を追求している」と話すのは、2年前に東京・銀座でフランス料理店「エスキス」をオープンしたフランス人シェフ、リオネル・べカ氏だ。
オープン以来、彼はフランスで一度も経験したことのない機会を東京でつかんでいる。たとえば、フランスのフランソワ・オランド大統領が来日した2013年、安倍晋三首相とオランド大統領の昼食会の料理を任された。
べカ氏は「東京のユニークなところは、食のプロが自分たちの扱う食材を熟知していることだ。私の周りには、個人的に非常に深い関係を築いている40人の生産者がいる。彼らは、時として、私が探している食材を、私以上によく知っている」と驚く。
シンガー氏も、べカ氏の意見に同意する。彼は12年に、銀座の三つ星店「鮨よしたけ」の姉妹店である「すし志魂」を香港にオープンするプロジェクトに携わった。開店2年足らずで、すし志魂はミシュランから「三つ星」を獲得した。その秘訣は、シェフを東京から呼び、食材を東京から仕入れていることにあった。
「魚はすべて築地から輸入している。香港では、同じ品質の魚が見つからないから」とシンガー氏。食の都と呼ばれた香港をしのぐ、東京の素晴らしい食の世界。だからこそ、べカ氏はこう指摘する。
「日本政府はもっと、外国の食材でも安く輸入することを認めるべきだ。そうすれば、東京の食の水準は、文句なしで世界最高峰になるだろう」
リオネル・ベカ(「エスキス」シェフ・エグゼクティブ)
1976年、フランス・コルシカ島生まれ。マルセイユで育ち、20歳を過ぎて料理の世界へ。2006年、ミッシェル・トロワグロより、東京にオープンする 「キュイジーヌsミッシェル・トロワグロ」シェフに任命され来日。11年、フランス国家農事功労賞シュヴァリエ授勲。12年、「ESqUISSE」開店と ともにシェフ・エグゼクティブに就任。
(撮影:松村隆史)
【関連記事】
・日本酒よ、ワインに続け 米国市場浸透のカギ
・「丸の内仲通り」を再生した仕掛け人が語る“人集めの秘訣”
・街再興の触媒となった 神田淡路町のマドンナ
・「地方創生」の道筋を考える
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。