2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2014年10月24日

キリン破談直後から新浪氏に打診

 確かに今のサントリーHDの勢いは鳥井信治郎氏が率いた創業期のころに似た勢いがある。

 総額で3000億円強を投じて買収した仏オランジーナ・シュウェップス・グループのほか、昨年2100億円で買収した英グラクソ・スミソクラインの飲料2事業、1兆6000億円で今年5月に傘下に収めた米ビームもそれぞれ好調。赤字が続いたビールは46年かけて黒字化したが、これも高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」や第3のビール「金麦」を軸に好調さは続き、10月1日付で事業部門を「サントリービール」として分離・独立させた。「山崎」や「白州」などNHKの朝の連続ドラマの追い風もあってウイスキーも調子はいい。世界市場を本気で目指す気持ちになるのも当然だろう。

 しかし、ここで疑問になるのは、その役回りをなぜ、新浪氏に求めたのかということだ。世界市場での躍進が現実味を帯びれば帯びるほど、トップの面白みは増すはず。経営者なら誰でも挑戦してみたいはずだ。佐治信忠会長はキリンホールディングス(HD)との経営統合交渉が破談になったその年に、新浪氏に社長就任の誘いをかけていたとされるが、それほどサントリーHDに人材がいないのか。

 答えはその逆だ。人材は余るほどいる。毎年、常に就職ランキングで上位に顔を出すサントリーHDの社内競争を勝ち抜いた経営幹部陣はいずれも粒ぞろいで、業界でも群を抜く。ビール事業を率い3月にサントリーHDの副社長に昇格した相場康則氏(65)や、佐治信忠会長の懐刀とされる青山繁弘副会長(67)はその筆頭格だが、2人以外にも体力、知力ともに秀でた人材は相当数いる。


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