2014年の新米価格にコメ産地では衝撃が走りました。JAから生産者への支払い価格が玄米60キロあたり8000円台を付けた地域が多数出たからです。魚沼産コシヒカリも過去最低の価格となり、2009年秋の低価格米ショックの再現となりました。
このような年はコメを早く販売してしまわないと、価格が下がってからの販売では経営に大きな痛手を受けることになります。少しでも早く少しでも高く販売しようとする、生産者の心理につけ込む詐欺が横行するのも、このような年です。
この状況で一部の評論家が「価格下落は輸出には好材料」と歓迎の声を上げていますが、事はそう単純ではありません。このところ「アジアの富裕層を狙え」というかけ声のもと、台湾、シンガポール、香港市場の開拓が叫ばれていますが、これらの市場は既に「日本の高級米」で飽和状態にあります。皆が「右へ倣え」をした結果です。
国内で余った安いコメを輸出しようとするのは、決して賢明な対策とは言えません。検討すべきは将来の販売量の確保と同時に、有利に販売するための足がかりを築く輸出です。「余ったから輸出」、あるいは「安く出せるから輸出」では、その場限りで市場に「余り物」を捨てて国内価格を維持しようとする、身勝手な輸出になってしまいます。
しかも、玄米60キロあたり8000円台では、カリフォルニア産コシヒカリより50%近く高い価格となり、市場での競争力はまだありません。玄米で60キロあたり6000円が、カリフォルニア産コシヒカリの通常時の精米工場渡し価格です。
カリフォルニアを襲う干魃
しかし、日本国産米はこれからさらに下落し、今後数年でカルフォルニア米の価格に近づくことになるでしょう。このコメを、なぜアジアにしか販売しようとしないのか不思議でなりません。日本食レストランが増加しているのはアメリカです。そのアメリカでも良質な寿司用短粒米は、まだカリフォルニア産コシヒカリだけです。