2024年4月24日(水)

オトナの教養 週末の一冊

2014年11月13日

――水産高校の教員は何年やられたのですか。

佐々木:16年間です。魚の調査で生徒の意識も変わりました。生活態度も変化し、学習意欲も大きく改善する。これを実感し、教員研修制度を使って上越教育大学でワカサギをテーマに教材研究をしました。それがきっかけとなり、ワカサギの生態を研究し、高校の教員を続けながら、社会人入学で、母校である東京水産大学で博士号を取得しました。その後、公募で大学教員になりました。

――今は、教育でどんなことを実践されているのですか。

佐々木:魚を基本とした実物教育の有効性について研究するため、東京の運河を使った水産学習に取り組んでいます。学生が授業を行うのですが、「総合的な学習の時間」を使って、大学の地元の東京の中学生と一緒に学んでいます。室内での学習は受動的ですが、外に出ると生徒は非常に能動的な動きをする。活動を通じて学びが深まってゆく様子がよくわかります。

――東日本大震災ではご出身の岩手県沿岸部も大きな被害を受けました。

佐々木:私は東京に単身赴任していますが、家族の住んでいた大槌町が被災して、家族は無事でしたが家を失いました。私も岩手県宮古市の出身なので、沿岸部が元気になってもらいたいと常に思っています。私のホームグラウンドである宮古市では、自然環境を保全しつつ魚をおいしくいただきましょう、という取り組みを行っており、天然のサクラマスでつくった「天然 宮古 さくらます鮨」を開発しました。ワカサギもここで研究しましたので、なんとか研究成果を地元に還元したいと思っています。

佐々木剛(ささき・つよし)
1966年、岩手県宮古市生まれ。1990年、東京水産大学卒業後、2006年まで岩手県立宮古水産高校教諭。その間、1997年上越教育大大学院修士課程修了、2004年東京水産大学で博士号取得。2006年より東京海洋大学准教授。

  
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