2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2015年2月24日

 また、イギリスとの違いでいえば、フランスの場合はシェンゲン協定に入っています。イギリスの場合は、入国を管理していますから、そこで政策的に移民を国境で管理する余地があります。他方でフランスは、EU域内からの移民の流入を止める余地がない。

 私がフランスに行った2009年当時、すでに移民が深刻な政治問題となっていました。サルコジ大統領は選挙で、極右の国民戦線(FN)に票を奪われないためにも移民に強硬な姿勢を示しました。移民担当大臣というポストを新設し、エリック・ベッソンがそれに就いて、移民に対して厳しく対処する姿勢をアピールしました。

 フランスに入国すると、長期滞在の場合はしばらくしてから移民局に行かなければなりません。私も行きましたが、そこでフランス語が話せるかどうかが試されます。能力がないと、強制的にフランス語学校に通う必要がある。また、フランス共和国の理念を誇示する長時間のビデオを見せられます。しかし、いくらやっても社会統合には限界がある。それはもうフランス人はわかっています。徐々に移民の制限のほうに動いていかざるを得ないと考えています。

 今回の「シャルリー・エブド」の事件は、多くのフランス人たちにとっても、これまでフランス共和国が誇ってきた麗しき社会統合の限界を感じさせる、大きな政治的転換点となってしまう懸念があります。

細谷雄一(ほそや・ゆういち)
1971年生まれ。英国バーミンガム大学大学院国際関係学修士号所得(MIS)後、慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了、法学博士。近著に『グローバル・ガバナンスと日本』(中央公論新社)

  
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◆Wedge2015年3月号より

 

 


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