対談

2015年4月13日

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丸山:もうちょっとうまく共存できる余地はありそうな気もする。本当に農地として使うのに適している場所と、新田開発とかで無理気味に農地にしたところって、土地のポテンシャルが違うじゃないですか。だから制度的には土地利用の合理性を基準にすべきで、転用そのものにインセンティブをつけるべきじゃなかった。面積あたり発電量で見たら太陽光よりも風力のほうが小さな開発で済むから、風力から段階的に導入するとか、部分的にバイオマスも活用するとかしたほうが合理的ですよね。

久松:逆に総合的なコストの高いものから入れてしまったということですね。固定買取制度がどうだったのかを検証すべきですよね。

丸山:田んぼとはいわないまでも、畑には戻せるくらいの可逆性を確保して開発するとか、工夫の余地はたくさんあったはずです。昔の三圃式のような耕作と休耕のローテーションの一部に太陽光を組み込んで、土地を休ませる期間に太陽光もやってみるという手もあるでしょう。森林にしても、何でもかんでも用材にするのではなく、燃料用と割りきれば針葉樹でなくてもいいから、広葉樹を20年間で回転させるとか、うまい利用のやり方を組み込んでいくのが現代的なやり方だと思いますよね。

久松:そうだと思います。戦後のスギもそうだけど、増産の時代は検証やアセスメントはどうしても後回しになっちゃいますよね。ここ2~3年の太陽光がそうだったわけでしょう。

丸山:宝塚市のエネルギー政策策定に関わっているんですけど、たとえば公共施設の屋上に太陽光パネルをつければ、光熱費を下げる意味でも合理的だし、普及にもつながるし、いざとなったら災害拠点にもなる。やるべきことは単純で、学校などの新しい建物を建てるときに、太陽光パネルを付けるためのアンカーボルトをあらかじめ設計仕様に入れる。設計時も太陽光パネルをつけた場合とつけなかった場合で光熱費のコスト試算比較をするといったことをやれば、合理性はすぐにわかるんです。でも、そこを突破するための縦割り行政の壁はすごく厚い。

 太陽光もバイオマスも、持続性とは無関係に固定価格買取制度で20年間はとにかく稼いで、あとのことは考えないのが経営的にもっとも合理的になってしまったのが悔やまれますね。極端なのが森林資源を使ったバイオマスで、発電量を6MWくらいの規模にして、半径10~30kmの木を20年間で切り尽くすのがもっとも「経営合理的」なんです。

久松:うーん……

丸山:もちろんもっと長期の経営効率でいえば、20年間で再生産できる範囲で伐採していくのが合理的です。でもそうすると収集範囲の拡大が必要で、面積あたりの収益性はむしろ悪化する。その時に「それでも続けるんだ」というモチベーションがあるプレイヤーは持続性を配慮するけど、20年間で稼いだお金を元手に別のことをしたいプレイヤーは、すべて切り尽くしてしまう。

久松:悪い意味での焼畑農法的思考ですね。

丸山:そうですね。

久松:環境問題では常につきまとう問題ですけど、将来の利得が今すぐに得られる利得よりも小さく感じられる時間割引率が、人間にとってはあまりにも大きいんですね。何世代かあとの持続的な生産性よりも、この瞬間の利得が常に上回ってしまう。そこは個人の意識のレベルで排除することは不可能ですよね。

(第5回へ続く)

久松達央(ひさまつ・たつおう)
(株)久松農園 代表取締役。1970年茨城県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、帝人(株)入社。1998年農業研修を経て、独立就農。現在は7名のスタッフと共に年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売。SNSの活用や、栽培管理にクラウドを採り入れる様子は最新刊の『小さくて強い農業をつくる』(晶文社)に詳しい。自治体や小売店と連携し、補助金に頼らないで生き残れる小規模独立型の農業者の育成に力を入れている。他の著書に『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)がある。

丸山康司(まるやま・やすし)
名古屋大学大学院環境学研究科教授。専門は環境社会学、環境倫理、科学技術社会論。環境保全に伴う利害の齟齬や合意形成に関する研究テーマに関わっている。最新の著書は『再生可能エネルギーの社会化 社会的受容から問いなおす』(有斐閣)、共著多数。

取材協力:オークビレッジ柏の葉
都市に暮らす人たちに「食と農」のつながりを実感できる場所を提供するというコンセプトのもと、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅の目の前という立地で、体験型貸農園とレストランを展開。農園ウエディングやカルチャー教室から企業研修まで、開催されるイベントは多岐にわたる。農園のすぐ横で季節感に富んだ食材を楽しめるバーベキューも好評。
http://www.ov-k.jp

  
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