2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2015年4月17日

 また、政府は一部の政策を除き、英語教育関係の政策では人口の何パーセントに英語力が必要で、その人たちに集中的にリソースを投下するとは明言していません。ある程度の人数が必要になるから養成すると言っているだけです。その辺が曖昧なため、実態とそれを受け取る我々の間にギャップがあるのかなと思いますね。

――年によって英語使用の頻度に変化はあるものなのでしょうか?

寺沢:06年と10年で、英語使用の増減を比較すると、「インターネット」において微増しているのみで、仕事をはじめ、音楽鑑賞・映画鑑賞・読書、海外旅行と比較可能なデータですべてマイナスになっています。10年の2月に楽天の社内英語公用語化が発表されましたから、ビジネス界や政府の現状認識とは相反しているとも言えます。

――06年と10年で英語使用に増減があるのはどうしてでしょうか?

寺沢:本書で詳しく述べましたが、2000年代後半の世界的な経済危機で説明できます。不況になって貿易や海外旅行者が激減した結果、英語使用が減ったと考えるのが自然でしょう。興味深いことに、この英語使用の減少はグローバリゼーションによって引き起こされた面があります。米国で起きたリーマンショックが金融グローバリゼーションの波に乗って瞬く間に全世界に波及したことは周知の事実です。ありえない仮定ではありますが、もし2000年代の世界がブロック経済化していたのなら、世界的不況にはならなかったでしょうし、したがって英語使用の急激な減少もなかったでしょう。というより、そもそもグローバル化がなければリーマンショックの原因となった金融商品が世界中に拡散することもなかったわけで、リーマンショック自体が起こっていなかったでしょうが。

――そうなると中学校などで生徒が学ぶ動機付けが難しいようにも思います。

寺沢:本書の内容を知った上で、教師が生徒全員に対し簡単に「これからの時代、英語が必要だ」とは簡単には言えないと思います。

 もちろんすべての生徒に英語の必要性が0ではありませんし、20パーセントや50パーセントと比較的少数や半数でもない。将来、英語が必要なのは1パーセントから10パーセントと微妙な割合なんです。さらに重要な点が使用率には人によって大きく差があることです。つまり、英語使用は、年齢や職業、学歴、居住地・就労地、社会階層などによって大きく変わります。誰もが1%〜10%の確率で英語を使うようになるわけではありません。たとえば職人として生きていこうと考えている生徒にとってはもっと低く見積もるのが妥当です。


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