ビットコインなどの仮想通貨をリップルという送金装置に載せる際には、いったんXRPというリップルの通貨単位に換算する。通貨換算を行うために、すべての仮想通貨はXRPとの交換レートを有する。リップルという仮想通貨が実際には流通していなくても、いつしかXRPという記号は、仮想通貨の共通単位としての地位を占めるようになる。
ここで思い出されるのが、欧州通貨統合の過程で登場したECU(エキュー)という単位である。ECUという単位を持つ通貨が実在したわけではない。ドイツ・マルクやフランス・フランなどの欧州通貨のバスケットとして、概念的にECUという単位が存在していた。各国通貨はECUとの交換レートを持っており、チャートには為替レートが表示された。欧州通貨統合が実現したとき、ECUはEURO(ユーロ)と名前を変えた。概念であったECUは、物質を纏った通貨へと昇華した。
リップルはECUを思い出させる。通貨との交換を約束する媒体が、いつしか価値を持つ本体に化けることは、貨幣の歴史において繰り返されてきた。リップルの共通単位XRPは、交換を容易にするための技術的なステップに過ぎない。だが、全ての通貨を橋渡しする役割を果たす共通単位XRPは、やがて仮想通貨の上位概念となるかもしれない。
モバイル&インターネット決済の分野では、世界のあらゆる企業が覇権を握ろうと競い合う。iPhoneで手軽に決済できるApple Payは、クレジットカードの利便性と安全性を高める。カード番号とiPhoneの固体番号を紐づけることによって、店頭ではNFC端末にタッチするだけで決済できる。ユーザーはiPhoneで指紋認証をするだけで、サインも暗証番号も不要である。ユーザーはApple Payという技術を信頼し、Appleはスマートな購買体験を提供することで期待に応える。
他の通貨を凌駕するリップル・ラボの技術力
ビットコインは、既存の通貨にとって代わろうとする。だが、ビットコインやその亜種であるアルトコインには、発行企業が存在しない。信頼の対象を持たない仮想通貨が信頼を得るためには、技術の正しさで証明するより他にない。
リップルという送金装置は、これまでの仮想通貨とは性質を異にする。リップル・ラボという研究組織が実在して、上級エンジニアが技術を開発する。仮想通貨に関する知見において、彼らを凌駕する者は殆どいまい。Googleをはじめとする主要ベンチャーがリップル・ラボに投資しており、彼らの技術力への期待を窺わせる。だが、リップル・ラボが利用者に対して、リップルという仮想通貨を発行するのではない。リップル・ラボが関与するのは、技術の開発と管理だけである。