2024年4月18日(木)

Wedge REPORT

2015年5月15日

 リップルの送金サービスを利用するためには、各国に複数開設されるゲート・ウェイと呼ばれる組織に登録する必要がある。そして、仮想または現実の通貨を送金して、その額に応じた利用枠を設定する。いわば、前払い式の資金移動サービスに類した構造である。このとき、送金した額の対価として払い出されるのが、IOU(I Owe You:債務を負う)と呼ばれる、電子的な債務証書である。

 IOUはゲート・ウェイを債務者とする電子債権に近いが、債権譲渡の構成をとらない。ゲート・ウェイは顧客の与信枠を管理する信用機関であり、与信枠の範囲で利用者は資金移動サービスを利用できる。すなわち、IOUはリップル送金サービスの利用券である。リップルという送金装置を利用する際には、この利用チケットをリップル通貨(XRP)に置き換える。あたかも、リップル通貨が金本位制の金であり、IOUは兌換紙幣のようにもみえる。

 だが、そうではない。IOUという債務証書を発行するのは各国のゲート・ウェイであり、米国のリップル・ラボはその価値を担保しない。価値の安定性は、発行者であるゲート・ウェイの財務健全性に依存する。本来、リップルは送金サービスであり、リップル通貨はその利用者にとって意味がある。リップル・ラボは15年3月に「日本の皆様に対する勧告:XRPの役割の説明」と題する公式声明を投稿し、短期の利益を目的としたリップル通貨(XRP)の販売をリップル・ラボは推奨していないことを宣言した。本来の開発目的を再確認したといえる。

 ビットコインやアルトコイン、さらにはリップルが競争を繰り広げる中で、決済ビジネスを制する企業は誰であろうか。おそらく有利な立場にあるのは、伝統的な金融機関と、仮想通貨の技術を使いこなすIT企業の共同体であろう。法制度の整備を条件として、仮想通貨ビジネスの基盤が成立することに期待したい。

  
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◆Wedge2015年5月号より


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