7月17日付のオーストラリアン紙に、マイケル・グリーンやピーター・ディーン等、米国と豪州の安全保障専門家達が連名で、論評記事を寄稿し、中国の台頭と米豪同盟の課題に関して述べています。
すなわち、中国の台頭は地域経済のエンジンとして大きな恩恵をもたらした。中国は豪州にとって最大の、米国にとって2番目の貿易相手国である。しかし、中国の台頭に伴うリスクも明らかである。軍の近代化の推進は地域的な軍事競争の懸念を生んでいる。小国を力で脅迫している。東シナ海、南シナ海における圧力は地域の緊張を高めている。この「アジアのパラドックス」、即ち経済的な協力と安全保障上の競争が並行して進行している事実は明白である。太平洋の米国の同盟国は今や米国より多くを中国と取引きしているが、他方この地域の殆どの国は中国中心の秩序よりも米国主導の秩序を好ましいものとしている。
豪州の政治家は、このパラドックスがこの地域における米国主導の同盟システムの終焉の前兆であるのかを議論している。米国は中東と欧州に注意を奪われていることや、米中間の紛争の罠に豪州が陥ることを心配する向きもある。この心配は少なくとも2004年、ダウナー外相がANZUS条約における豪州の義務は台湾海峡の有事には及ばないと述べ米国を驚かしたときに遡る。2014年にはジョンストン国防相が同様のことを東シナ海について述べた。要するに豪州には米国によって罠に陥ることを心配する向きがある。
一方、米国では、将来の中国との緊張の事態において豪州に見捨てられるのではないかと心配する向きがある。豪州の2013年の国防予算が、対GDP比で、1938年以来最低の水準となった時、米国の懸念は大きくなった。豪州での議論を見て、アジアにおける最も信頼に足る同盟国として日本が豪州にとって代わるのかと問う向きもある。この豪州における罠の心配と米国における見捨てられることの心配が同盟の管理にとっての主要な課題である。
この傾向はこれまでの流れの逆転を意味する。豪州はその歴史を通じて主たる同盟国、英国や米国に見捨てられないことに神経を使ってきた。第1次世界大戦以来の全ての主要な紛争において、米軍とともに戦ったのは、英米両国が豪州の犠牲を記憶し、いざという時に援護してくれることを確かなものにしたかったからである。また、米国も豪州の支持を心配したことはなかった。
米豪同盟の緊張は表面化している。それは中国の行動によって地域紛争のリスクが高まっているからである。今日、同盟は必要なのかと問う向きがある。こういう議論はそれぞれが置かれた状況の違いにもよるが、中国に対する共有された戦略が欠如していることにもよる。
しかし、現下の状況は、同盟の重要性を増すものである。米豪同盟は底深く不朽である。当面、次の3分野を優先分野として示唆したい。