2024年11月24日(日)

対談

2015年9月26日

木下 日本的ですよね。アメリカのエリアマネジメントでは地権者が中心となるのですが、いわゆる大地主はエリアの持っている共有財にもちゃんと投資をするんですよね。自分の敷地だけで考えていても価値の改善には限界があるから、もう少し広い視野で投資をしていく必要があることを知っている。自分や家族単位だけでは物事を考えない。個人や家族と公共との間の「共益」にあたるところを担っているんですよね。

久松 かつては日本だってそうだったんですよ。地域に還元することが、人材育成機能にもなったんでしょうし。

木下 限りある財をどう活用して、全体での生産力を上げていくかという意識があれば、様々な問題解決はより先に進むと思うのですが、個人と家族のことばかり考えている人が互いの利害をぶつけあうと、ほんとにダメだなって思いますね。

久松 簡単じゃないけど、そういう制約条件ってあった方が面白いじゃん、って思うんですよね。

 僕自身がけっこうな田舎に住んでいるから思うことだけど、PTAの集まりなんかで話をしていると、地元に残っている人たちは別に生活に困っていない。なぜなら親元に住んでいるからなんですよ。土地があるから仮に自分で家を建てるにしても上物だけだし、親が同居しているから子どもの面倒も見てもらえる。たぶん年収300万円くらいあればかなり幸せに暮らせちゃうし、けっこうな車に乗ったりもできる。で、みんな中学くらいで地元に残ることを決めているか、親にそう決められていて、中学か高校のネットワークのなかで結婚していく。祖父母から孫まで、幼稚園から高校まで同じということも普通にありますよね。この絆は非常に強固で良い面もたくさんあるんだけど、発展性には乏しいんですよね。

木下 色々と固定化されていきますね。

久松 一方で、学力偏差値がちょっと上の人は東京の大学に行くんだけど、一定割合がUターンして公共セクターに入ってしまう。地元組もUターン組も、どっちも救われない構造ですよね。このままでは疲弊していくだけで。
でも東京でも、流入人口が多いから目に見えないだけで、いまだに非生産セクターに「安泰」を求めている人がいくらでもいるわけです。僕は農業をやっているから自治体の農政関連の方々と20年以上つきあっているけど、言い方は悪いけど人材の劣化がシャレにならないレベルだと感じています。県レベルではまだしも、市になるとちょっと目も当てられない。それは中央官庁の人たちにも責任があって、農水省が施策を考えて予算を付けたって、県から市町村に降りて行ってそこで実行できなければ何の意味もない。

 でも彼らは予算を付けるだけなんだよね。現場からすればいきなり予算と仕事を押し付けられて、その金をもらってくれそうな人にバラまくだけですよ。中央官庁の人も現場の人たちと話したほうがいいよ。そこがまるでわかっていない。


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