日本のアニメやマンガは海外でも大人気だが、米国のサイトが「西側フェミニストから見たアニメとマンガの女性キャラクター」という論考を配信している。英BBCなどが「少女愛、小児性愛を促す異常な国」と短絡的に報じるのはよく聞くが、この米国のサイトの場合、アニメ好きならではの細かくかつ意外な見方が面白い。
芸能、アニメ、ゲームなどを扱う米国のエンターテイメントサイトThe Mary Sueの配信記事「西側フェミニスト……」はアルビナ・レイという女性記者が執筆。「セーラームーン」や「もののけ姫」、日本の女性漫画家集団CLAMPの作品などを取り上げている。
レイ記者によると、女性が出てくるマンガやアニメは大きく、①少女(恋愛)②大人の女性③ECCHI(エッチ)④HENTAI(変態)などのジャンルに分かれるそうだ。
「西洋でも女性が望まないのに性的対象(オブジェ)にされる問題は解決していないが、差別的なメディアを排除し改善を目指してきた。日本社会、特に女性たちはこの問題をどう考えているのか」とフェミニスト的な意見を出している。正論だが、とりあえず「立派な意見を言っておきたい」といった雰囲気の語り口だ。
性的対象にされる少女たち
やはり、この記者は日本のマンガ、アニメがよほど好きなのだろう。作品について詳しく語るところから、どちらかと言えば、糾弾というより、「私の好きな世界だから、こうしてほしい」という哀願に聞こえる。
「CLAMPはなぜ、桜のような強い少女キャラを描きながら、『ちょびっツ』のように少女を性的対象にするのか」
「桜」とはCLAMPの作品『カードキャプターさくら』の小学4年生の勇ましい主人公のこと。別のCLAMP作品『ちょびっツ』では人型パソコンの少女と、それを拾う青年との関係が軸だが、裸だったりメイド姿の少女の描き方、陰部にスイッチがあるところに、明らかな性的差別があるという。
「作者たちは視聴者に応じて描き分けている。前者では少女たちに強さを教え、後者では男たちのファンタジーを満たしてやっている」と断じる。
海賊を描いた大ヒットマンガ、『ONE PIECE』についても「性的な表現が多い上、女は弱く、醜い女子はやっつけてもいい、OKAMA(原文のまま)は気持ち悪いといった偏見を巧みに織り込んでいる」といった読者たちの声を紹介している。
一方、宮崎駿氏の作品に出てくる少女は「皆、自分に誇りを持っており、経験を経て成長し、女子は社会の要求に合わせて自らを変える必要はない、と励ましている」から問題ないそうだ。「セーラームーン」も性的対象に映るが、記者によれば、主人公が強く主題が「ガール・パワー」だからOKらしい。
英BBCの報道のようなピューリタン的な偏見はないものの、分析に主観があふれ、印象論といった感じだ。いずれにせよ、こうした細かな見方が出てきたのはいいことだ。日本のアニメファンから世界に向けての反論を聞きたい。
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