2024年12月23日(月)

金融万事 塞翁が馬

2015年12月31日

 FinTechベンチャーとして企業数が最も多く、海外の金融サービスにおいて破壊的なイノベーションが見られる分野として前回コラム(FinTech伝統的な金融業界を破壊)では「貸付け(ローン)」を挙げた。

 Marketplace LendingやP2P Lendingと呼ばれる新規参入ベンチャーは、インターネット経由の透明かつ合理的なプラットフォームを使い、伝統的な金融機関よりも良い金利や投資リターンで借り手と貸し手(又は投資家)を合致させている。ただ、このコラムのタイトルが正しいのならば、果たしてこれが何を破壊しているのだろう?説明するにはこの新種サービスの起源に遡る必要がある。

90年代から存在したマイクロファイナンス

  時はミレニアム(2000年)、森喜朗内閣の時代。記憶のキーワードはIT革命、シドニーオリンピック、そして慎吾ママなどだろうか。海外ではマイクロファイナンス(小口金融)やマイクロクレジット(小口融資)が盛り上がっていたのを覚えているだろうか?

 アフリカ、東南アジア、中東の途上国における貧困緩和策としてNGOが始めたマイクロファイナンスは、1990年代にMFIs(Micro Finance Institutions、直訳:マイクロファイナンス機関)として規模の経済を獲得し、2000年には成熟期を迎えた。

 あまり知られていないのは、こういったファイナンスの対象が先進国・途上国という区分に関係無く、貧困層をターゲットしたものとして進展した事である。貧富の格差が激しい米国では当時230万~350万人(人口の1%前後)ものホームレス生活者を抱えており、慈善事業としてのマイクロファイナンスが拡大していた。そこまでの生活困窮者でないにしても、初期のP2PやMarketplace Lendingは、伝統的金融機関でローン申請が通らない小口資金ニーズに対応するべく、チャリティ・プラットフォームとして始まったのだ。「必要は発明の母(プラトン)」である。


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