「新規事業に手を出したくても人事がついてこない……」
先日、大手メーカーの斉藤社長(仮名)はため息をつくように言った。いろいろな経営トップと話をすると、決まって人事と組織に関する話題になる。
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会社は、人事のイノベーションを起こさずして変われないということ。ビジネスの成功は誰がやるかにかかっている。どういう組織でやるか、誰に任せるかで会社の成長に貢献できるかが決まる。ヒトと組織というテーマを抜きに経営の議論はできない。
永年人事の仕事に関わってきて感じるのは、人事の役割が大きく変わっているのに、旧態依然とした仕事を続けているために人事はビジネスや経営がわか
らないというレッテルを貼られていることだ。業績悪化に伴い、人材の整理や見直し等、後ろ向きのリストラに終始したこともその印象を強めている。
世界を見渡せば、経営トップの右腕として、重要な意思決定のサポートができる戦略的な人事が登場している。
米GEの会長兼CEOのジェフ・イメルト氏は常々「最も重要なのは人材であり、CEOとしての時間の30%程度をあてている」と発言している。
日本企業は、経営の三要素ヒト、モノ、カネのうち、モノとカネについては国際標準と比較して遜色のない水準まで改革してきた。しかし、ヒトに関して
は、経営の根幹をなす戦略部門として位置付けてきただろうか。