2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年4月26日

 もう一つは、国際秩序に対する挑戦という意味では、より重要な問題である。それは、南シナ海の軍事施設に電力を供給するという目的である。中国は南シナ海で軍事演習を行うばかりでなく、パラセル諸島(西沙諸島)やスプラトリー諸島(南沙諸島)の岩礁や暗礁を埋め立てて建造した人工島上に、飛行場等の施設を建設している。

 例えば、パラセル諸島のウッディー島には、三沙市議事堂が設置されているばかりでなく、2015年11月1日に、中国メディアが、J-11戦闘機がミサイル等を搭載して展開したと報じ、2016年2月には、米国メディアが、地対空ミサイルが配備されたと報じている。パラセル諸島の軍事拠点化が進んでいる状況を確認できるのだ。

約束を反故にした中国

 中国政府は、南シナ海における建築物の大半は、灯台など民間利用が目的であると主張している。また、習近平主席は、2015年9月の米中首脳会談において、「スプラトリー諸島を軍事化しない」と言明していた。この後も、王毅外相らが、スプラトリー諸島を含む南シナ海全体について同様の見解を示してきた。

 米国は、中国の南シナ海における行動が、これらの約束を反故にするものだと批判している。中国は、習近平主席が「軍事化しない」と言明したスプラトリー諸島においても、3000メートル級の滑走路を含む飛行場ばかりでなく、対空レーダー、対水上レーダーと思われる施設を建設している。

 中国はまた、「固有の領土への防衛施設整備は軍事化ではない」と主張する。日本や米国にとって、この中国の主張はこじつけのように聞こえるが、中国が言う「軍事化」には、「軍事的緊張を高める行為」というニュアンスが含まれている。中国は、「南シナ海における軍事的緊張を高めているのは米国であって、中国は米国の軍事行動から自国を防衛するために仕方なく軍事施設を整備している」と主張しているのだ。


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