2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年4月26日

 米中が双方ともに引かない状況下では、中国の人工島上の軍事施設建設を止めることは難しい。ここで問題になるのが、これら軍事施設に対するエネルギーの供給である。地盤の強度に問題があり、施設を建設可能な土地面積にも制限がある人工島上に発電所を建設するのは容易ではない。

軍事施設は大量に電気が必要

 しかし、軍事施設を整備すれば、大量の電気を必要とする。まず、レーダー等のセンサー自体が大電力を必要とする。レーダーの探知距離を伸ばしたければ、大きなアンテナ面積と、大電力を必要とするのだ。

 さらに、スクランブルや航空優勢確保のための作戦を想定した戦闘機部隊を展開するとなると、数百人の人員を配備する必要がある。航空機を運用するために必要なのは、パイロットだけではない。航空機の運航を準備し整備する整備員、航空機の管制官、気象予報官、基地の整備を行う基地員等も必要である。航空機の運用は、多くの人員によって支えられているのだ。航空機の運航や整備のための彼らの業務や生活のためにも大きな電力を必要とする。

 海上浮動式原子力発電所は、南シナ海における軍事施設を運用するための前提条件となるエネルギー供給に関する問題を解決するだろう。中国は、南シナ海をコントロールするための実力を着々と高めていく。

 さらに、日本や米国に対するコストは、中国の実際の軍事行動だけではない。原子力発電所が南シナ海に出現すること自体が、艦艇や航空機の航行や飛行に制限を加える可能性を有するのだ。

 日本の航空法は、「航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない」と定めているものの、原子力発電所上空の飛行を明確に禁止している訳ではない。

 航空法を読む限り、原子力発電所は「人又は家屋の密集している地域」ではないため、150メートル以上の空域であれば飛んでも良いと理解できるが、原子力発電所上空を飛行することの危険性が認識されていなかったわけではない。

 運輸省(当時)は、原子力発電所上空の飛行をできる限り避けさせるよう、通達を出している。また、福島第一原発事故やドローン技術の向上、テロの脅威等を受けて、関連県知事から成る協議会が、「原子力施設周辺上空の飛行禁止及び飛行禁止区域周辺の航空機の飛行に係る最低安全高度の設定について、法制化を図ること」を含む要請書を政府に提出している。


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