Wedge REPORT

2016年5月1日

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76歳ベテランが引っ張る現場

 取材班は10人1班の瓦礫撤去作業に密着した。班長が注意事項の伝達を終えかけたとき、円陣の後ろにいたメンバーの1人が強い口調で声を上げた。「ボランティアは自己責任であることを忘れないこと。鉄や釘でけがをすると破傷風になるので気をつけるように」。

チームを牽引する76歳の尾畠氏(右)

 声の主は赤い繋ぎの作業服にヘルメットを被った尾畠春夫さん、76歳。被災地でボランティアを重ね、東日本大震災では南三陸町で500日間も入った災害ボランティアのベテランだ。チームの空気が引き締まったところで、センターから車で10分の距離にある民家へ出発。

 作業は崩れ落ちた屋根瓦の山を、10メートル離れた所まで一輪車で運び、トラックの荷台に乗せるというもの。「なんでシャベルを持ってきていないんだ!」。到着早々、尾畠さんが声を上げる。小雨が降る中、男性たちは黙々と壊れた瓦を土嚢袋に詰め込み、行ったり来たりを繰り返す。

 その光景を見かけて隣の住人が「私の家の瓦礫も一緒に運んでもらえませんか」と駆け寄ってきた。しかし、作業通知書に書かれた内容しか作業ができないのがルールだ。センターの電話番号も案内するも、2台の電話回線はなかなか繋がらず、「現地に行ったほうが早そうですね」と夫婦で車に乗り込んだ。

 作業開始40分で軽トラック4、5台分の瓦礫が撤去された。尾畠さんは瓦礫を撤去した後も、散乱したプランターを並べ、家の前のスペースに積もった土砂を綺麗に取り除く。「家の顔も綺麗になれば、頼んで良かったと思ってもらえる」。単なる作業で終わるのではなく、相手の気持ちを慮ってこそボランティアだと背中で語る。「彼らが次の現場に行ったときに、同じミスはしないだろう。自分は嫌われてもいい、これまでの体験を伝えることでボランティアが育ってくれれば」。初対面のメンバーに厳しく接するのも、ボランティアの力が復興の原動力になると信じているからだ。

 各災害ボランティアセンターではミスマッチの解消に向けて情報発信も日々行われている。被災地の状況に応じて、継続的に支援の手が届け続けられれば復興のスピードは加速していくだろう。

  
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