2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月25日

“相互確証破壊”無効化する恐れ

 米露中の3カ国が、最新兵器の開発にしのぎを削っていて、戦略状況が変わりつつあるのは事実です。その一環としての核兵器の小型化が、核使用の敷居を低くする恐れがあるのはその通りでしょう。核兵器の小型化のほかにも、もし米国が中国を超音速弾頭で攻撃した場合、中国が核で反撃する恐れも指摘されています。「相互確証破壊」が有効でなくなるのではないかとの懸念です。

 しかし、いくら核兵器が小型化されたからと言っても、そう簡単に使用されるとは思われません。たとえ小型核兵器による破壊が、従来の場合より限定的であっても、使用は戦争状態を意味し、相手は報復する可能性が大きいです。米国が中国を超音速弾頭で攻撃する場合も同様です。その過程で攻撃がエスカレートする恐れが多分にあります。小型核兵器とはいえ、その放射能物質の影響から考えれば、使用のリスクは大きく、核の精霊が瓶を飛び出したという状態ではないのではないでしょうか。

 ペリー元国防長官は、ロシアの包括的核実験禁止条約からの脱退を懸念しているとのことですが、ロシアが条約を批准しているのに対し、米国は中国同様、条約を批准していません。ロシアが条約から脱退するとすれば、地下核実験をするためと思われますが、米国はロシアの条約からの脱退を非難する強い立場にはありません。

  
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