こうなると11月の大統領選挙はこれまでの1対1の対決からかけ離れたものとなる可能性が出てくる。投票する対象が何人もいて、前代未聞の大きく票が割れる選挙になるかもしれない。
独立候補か、ルール改正か
サンダース氏自身は「独立候補になるつもりはない」とあくまで最後まで民主党候補として戦い続ける構えだ。7月の党大会では、「スーパーデレゲート」と呼ばれる特別代議員の処遇をめぐって党と戦う心づもりがあるという。実はスーパーデレゲートを除くと、ヒラリー氏とサンダース氏の差は300もない。ただしスーパーデレゲートは党上層部、上下両院議員、民主党知事などが含まれ、誰に投票するかは自由だが現時点で大半がヒラリー支持を表明している。スーパーデレゲートは民主党にのみ存在する制度で、このルールを変え「本当の意味での民意の反映を」とサンダース氏は訴えている。
一つだけ確かなことは、サンダース氏はたとえ大統領にならなくとも大きな足跡を残すだろう、ということだ。25歳以下の8割の支持を集める、と言われるサンダース氏。集会に参加した若者の多くが「これまで政治に興味はなく投票もしなかった。そんな自分たちを選挙集会に呼び寄せ、政治について真剣に考える機会を与えてくれたのがバーニーだ」と語っていた。実際にサンダース氏に影響を受け、連邦政府議員選挙に乗り出す若手も出始めており、サンダース氏を支えた草の根運動がそうした若手議員の支持団体になっている。
アメリカン・ドリームという言葉は響きが良いが、その徹底的な拝金主義の結果が現在の格差社会とも言える。このシステムを急激に変えるのは難しい。しかしサンダース氏を支持する若い層の中から、いずれ真剣に社会の変革を求める波が生まれてくるかもしれない。
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