中国人の海外出張の予算は少なかった
25年前の国営企業の出張予算は国家の規定があったので客先訪問をするにしてもタクシーの利用すらできなかった。宴会の時に李先生の宿泊予算が限られていたので安いビジネスホテルを探したが、なかなか見つからなかった昔話が出てきた。今は懐かしい古き良き思い出である。それでも海外出張に行けるのは一握りのエリートだけだった。当時の中国は貿易を振興して外貨を稼ぐために中国元を安くコントロールする必要があった。中国元の為替レートを国家が安く誘導していたので、日本人にとっては中国出張時のコストは何でも安かったが、中国人の海外出張は厳しく管理されていたそうだ。今や中国人の「爆買いツアー」が有名になって海外不動産まで「爆買い」が流行っているというから隔世の感がある。
でも、考えてみると昔はみんなが貧困だったから別に恥ずかしくもなんともなかった。我々、日本人商社マンだって同じ経験は沢山やっている。
国民の不満を助長しているのが一般の中国人が10%の金持ちとの格差がますます開いていくところにある。農民戸籍しか持てない地方の貧困層は大都市で豊かな生活をしている富裕層の暮らしぶりを毎日テレビで見るのだから暴動が起こるのも当たり前だ。
しばらく前に尖閣諸島を日本政府が国営化した時に中国全土で暴動が発生した。ところが暴動が一段落した後には共産党政府に対する不平不満が爆発した。政府が国民の不満の目を外に向けさせるために日本を目の敵にした反日報道を繰り返しても、最終的には大衆の不満と怒りは格差社会に向かうのである。
資産バブルのメリットを享受しているのは一部の富裕層だけ?
ヨーロッパの調査機関のアンケートによると、中国人の幸福度(HPI)は世界150カ国中の128番目だったと云われている。一方、中国政府が行った「中国都市住民幸福感調査」によると75%の中国人が「幸福」であるとの結果が出たらしい。中国政府は都市戸籍を持てない農民層をこの調査の母数に含めていないのである。
この都市戸籍と農業戸籍の違いが中国の格差の原因であったが、今はかなり緩和策が進んでいるとの話も聞く。北京や上海などの大都市には農業戸籍から都市戸籍への移動はいまだに制限が厳しいようだ。
一般的には農業戸籍者は全人口の6割以上と予想されるが、現状を見る限りジニ係数(所得格差を測る指数)は0.61を示しており、中国の所得格差は危険域をはるかに超えており不平等社会であることは間違いない。