2022年10月7日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年10月5日

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西本紫乃 (にしもと・しの)

北海道大学大学院公共政策学連携研究部付属公共政策学研究センター研究員

1972年広島県生まれ、広島大学大学院博士後期課程単位満了退学、元外務省専門調査員(在中国日本国大使館)。著書『モノ言う中国人』(集英社新書、2011年)。

 では、中国の国民は今回の米国大統領選挙をどのようにみているのだろうか。このような両候補のどちらに大統領になって欲しいか、中国ではそれぞれの候補を支持する層は一般庶民と知識人とで二つに分かれているようだ。

 中国ではヒラリー氏は国務長官を務めていた時期に、米国がリバランス政策やアジア回帰を打ち出したことなどから、中国にとって敵対的な人物だと思われている。また、夫のビル・クリントン氏の大統領在任中のルインスキー事件への理性的すぎる対応や、表だって堂々と大統領になる意思を表明する姿が、中国的感覚からすると野心的すぎるしたたかな女性と感じられるようだ。ヒラリー氏は中国の庶民のあいだでは不人気だ。

トランプの悪影響は日本のほうが大きい?

 一方で、トランプ氏は中国では案外中国の庶民から支持されている。任志強氏や王石氏など不動産業界で成功した大物財界人の発言が一目置かれるように、中国では一般にビジネスに成功した人物をリスペクトする傾向が強い。そうした文化的な背景もあいまって、トランプ氏の政治的正しさより本音の意見や、過激な発言は中国人の政治的感覚からするととても新鮮で、むしろ好印象を与えている。外交政策上も、雇用の流出や貿易赤字について中国を槍玉にあげることは多いが、トランプ候補が大統領になれば、中国よりも日本にとって打撃が大きく、欧州各国とも上手くやっていけないだろうと中国では見られている。

 米国が西側社会をかき乱すことになれば、中国にとって悪い話ではない。さらに米国国内の政治も混乱や階層間の対立の激化も心のどこかで期待しているというのも本音だろう。しかし、それよりも何よりも、中国の多くの人はおよそ自国の政治家とはかけ離れたトランプ氏の経歴や言説を、政治の悪ノリ、ある種のエンターテイメントとして楽しんでいる側面が強い。

 逆に、中国の知識人やメディア関係者のあいだでは、ヒラリー氏を支持する声が強い。オバマ政権の政策が引き継がれるであろうことから、ある程度政策の見通しが利くという安心感のほか、米中の経済関係においても、関税や投資、知的財産の分野で中国をあからさまに規制することはしないだろうと予想されている。いわば、まっとうな見方であるともいえるが、中国の知識人やメディア関係者にはそれだけではない胸算用もある。

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