2022年10月7日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年10月5日

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西本紫乃 (にしもと・しの)

北海道大学大学院公共政策学連携研究部付属公共政策学研究センター研究員

1972年広島県生まれ、広島大学大学院博士後期課程単位満了退学、元外務省専門調査員(在中国日本国大使館)。著書『モノ言う中国人』(集英社新書、2011年)。

 このように、中国でも今年の米国大統領選挙は何かと話題になっているが、今回の選挙はオバマ大統領が誕生した2008年の時と比べると中国の人々の関心度はあきらかに低い。2008年のときは、オバマ氏のリベラルな政治姿勢や白人男性でない大統領の誕生が、中国人の民主主義に対するあこがれを刺激し、「いつになったら中国は自分たちのリーダーを自分たちで選べるようになるのだろう」といった声も少なからず聞こえてきた。

中国人民にとってより悪くなった政治

 あれから8年経った今年、米国大統領選挙に対する中国の人々の羨望のまなざしはほとんど感じられない。それは中国の政治がこの8年間で国民にとってよりよくなったからではなく、むしろその逆だ。インターネットに対する規制の強化により、国民の率直な意見が世論としてまとまらなくなっている。知識人の考え方や見方が一般庶民に伝えられにくくなり、かつてに比べ、国民の声の政治に対する影響力は完全に削がれてしまった。

 もう一つ、選挙制度と民主主義そのものの魅力が低下していることがある。世界各地で起こっている中間層の没落と政治の内向化傾向、ポピュリズムは、かつては中国の人々にとってまぶしく見えた選挙制度や民主主義の輝きを低下させている。中国国内では、今年6月の英国の国民投票結果を受けたEU離脱の決定は、西側政治体制の衰退の象徴だとされ、優れたリーダーによる専制体制の方がむしろすぐれているのだ、という政権側の自己肯定の根拠に使われている。

 米国大統領選挙をどう見ているか。そこからは、ここ10年足らずのあいだに、中国だけでなく、他の国も決して良い方向に向かっていないという現実が浮かび上がる。なんとなく暗澹たる気持ちにさせられてしまう。

  
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