2024年11月22日(金)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年10月25日

 以下では、討論会で見えたトランプ候補のパーソナリティに焦点を当てます。

自己愛的パーソナリティ

 トランプ候補は一言で言えば、かなりの自己愛者と言えます。自己愛的パーソナリティ障害の症状には、「人よりも自分が優れていると信じている」「業績及び才能を誇張する」「自分は特別であると信じている」「自分に対する肯定的な評価を誇張する」「自分に対する批判に対して過剰反応を起こし対決姿勢をとる」「自分の意見を押し通す」「感情移入に欠ける」などがあります。

 2016年1月、アイオア州で開催された集会でトランプ候補は以下のように述べています。

 「私は(ニューヨークの)5番街の通りの真ん中で誰かを撃ったとしても、票を失うことはないだろう」

 この発言から、次の点を読み取ることができます。第1に、トランプ候補は自分の支持者は忠誠心が強いと過度に信じています。第2に、自分を特別な存在であると捉えています。第3に、誇張した表現を好みます。

 3回にわたって行われた2016年大統領候補テレビ討論会で、トランプ候補は大統領としての資質についてクリントン候補から批判されたとき、「自分の強みは性格である」と反論しました。さらに、クリントン候補はトランプ候補が6回も倒産させたと指摘したのに対して、雇用創出したことを誇張して議論しています。さらに米国が抱える諸問題に関して、「私を信じてくれ」と自分を「万能な解決者」として描くのです。

 異文化的な視点から述べますと、トランプ候補は自身と異なった人種及び民族に対して種々の偏見のある発言をしてきました。ことに、メキシコ系、イスラム教徒並びにアフリカ系に対して非好意的ないし敵意のある態度をとってきたのです。共和党候補指名争いにおいて、同候補は障害者を笑いものにしました。率直に言ってしまえば、少数派及び弱者に対して不寛容なのです。

 第3回テレビ討論会において、フォックスニュースの司会者が選挙結果を受け入れるのかと質問を投げかけると、トランプ候補は「それはそのときになったら考える」と回答し明言を避けました。翌日の集会では「自分が勝てば投票結果を受け入れる」と述べたのです。

 2015年8月に開催された共和党候補指名争いの第1回テレビ討論会で、フォックスニュースの司会者の一人が、自分が敗北した場合、指名を獲得した他の候補を支持するかという質問に対してトランプ候補のみが「しない」の意思表示をしました。同候補は、自分は特別な存在であり他者よりも優れているという自己概念を否定してしまう出来事や結果は到底受容することができないのです。ここにも同候補の強い自己愛的パーソナリティをみることができるのです。

   
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