2024年11月22日(金)

Bangkok駐在便り

2016年12月9日

 ここ数年、タイ政府は人件費の高騰化などを背景に、産業の高度化を推進しているため、モノづくり現場は“高性能”か“コスパ重視”の二極化が進んでいる。前者が「自動化や省人化」といったことであり、後者は「スキルのないワーカーでも簡単に扱える」といったこと。タイの製造業界は、この二極化の波に追いつくよう各企業が知恵を絞って、切磋琢磨している。黙っていても仕事を受注できる時代はとうに終わり、成熟期にさしかかっているのは間違いない。

製造業の現場は日系主導からローカルへ

国王崩御の影響で演出は控え気味だったが、イベントを彩るコンパニオンが華を添える

 今回、話を聞いたブースのほとんどが「いい感触を感じた」ということだった。また、いずれのブースに共通していたのが、購入企業がもはや日系ではなく、タイローカルだったということ。前出の工作機械メーカーのAさんいわく「日系主導からローカル主導に移り変わる過渡期」とのこと。

 ここ数年、Aさんの企業のブースでの商談は、日本人が訪ねてきて、日本人の営業が対応することがほとんどだった。しかし、今年はそれが逆転し、タイ人がやってきて、タイ人の営業が対応するケースが大半だったという。また、訪問してくるタイ人の多くがオーナーという場合が大半で、何よりも成約までのスピードが早い。工作機械を受注したある企業は「オーナーが実機を見て、即断してくれました」と話していた。日系企業であれば、「一度本社に聞かないと」「稟議を通さないと」といったことで時間ばかりかかることが多いが、そこはタイ人オーナーの決断一つ。

 特に日系の工作機械はまだまだ“ブランド力”がある。タイ人にとって工作機械の御三家のような製品を使う場合、それはわざわざ“フェラーリ”を獲得したようなことと同義。元々、見栄っ張りである富裕層のタイ人好みであり、ここら辺は“ジャパンプロダクト”が生き続けていることを実感し、日本人として誇らしい気持ちになる。3Dプリンタなど高性能な工作機械に集うタイ人学生たちの姿も見受けられた。

 総括すれば、「明るい兆しが見えてきた」ということは間違いないだろう。今年の経済成長は3%超になるとみられている。カンボジアやミャンマーといった7〜8%とは比べられないが、成熟期にさしかかっていることは確かであり、“景気の踊り場”ということも間違いないだろう。しかし、購買力や産業の一大集積地というマーケットのポテンシャルは決して低くはない。「単純労働による大量生産」と「高度産業の推進」というテーマに挟まれながらも、タイのモノづくり現場は確実に成長を遂げていく。

  
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