2024年4月26日(金)

サムライ弁護士の一刀両断

2016年12月12日

無断転載は著作権侵害にあたる

 例として、あるキュレーションメディアが、あるライターが執筆し、ウェブサイトに公開した記事をコピー&ペーストの形で掲載し、それに解説を加えた別の記事を掲載したとします。このような方法で作られたキュレーションメディアには、著作権法上の問題はないのでしょうか。

 まず、元となった記事は、ふつうは著作権法上の「著作物」にあたると考えられます。そして、ある著作物(元の記事)を創作した者(著作者。ここではライター)は、著作物に対する著作権として、「無断で複製されない」という権利(複製権)を有しています。

 著作者本人や著作者から権利を認められた者(これらの者をまとめて「著作権者」ということにします)が転載を許可していれば問題ないのですが、他人の著作物をコピー&ペーストして自分のウェブサイトに掲載するのは、複製権を侵害しているとして著作権法に抵触することになります。

 また、元記事の一部だけを抜粋するような場合や、記事の表現の一部を改変した場合であっても、「複製」にあたり、著作権侵害とみなされる可能性があるので、注意が必要です。

「引用」が認められる可能性は?

 一方で、他人の著作物であっても、それが「引用」にあたる場合には、正当な目的を有しているなど、一定の条件の下で、著作権者の許諾を受けることなく利用することができるとされています(著作権法32条1項)。

 元記事を無断で利用したキュレーションメディアの管理者は、「これは引用にあたるので著作権法違反にはあたらない」と主張することは可能でしょうか。

 ここで、無許諾の「引用」が認められている背景には、「文化は常に先人の業績を下敷きにして発展するものなので、正当な範囲での利用は認められるべきだ」という考え方があります。第三者が他人の著作物を「引用」を免罪符にして自由気ままに利用することは、著作権法が想定するものではありません。

 著作権法32条1項の条文にも、引用は「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とされており、引用には制限があります。

 他人の著作物の利用が、「正当な範囲内の引用」かどうかの判断は一筋縄ではいかないところがあり、常にグレーゾーンがある状態です。

 この点、正当な引用かどうかは、伝統的にはおおよそ次の基準を満たしているかどうかで判断するとされてきました。

① 利用する側の著作物と、引用される側の著作物が(引用符や枠などで囲むなどの方法で)明瞭に区別して認識できること(明瞭区別性)
② 利用する側の著作物が「主」、引用される側の著作物が「従」の関係にあること(主従関係)
③ 引用元を明確に表示すること(出所明示)

 この基準によると、記事の大部分を他の記事の引用で占められているようなキュレーションメディアであって、他の記事の著作権者に許諾を得ていないような場合は、たとえ、引用であることや引用元を明示していたとしても、主従関係が逆転している(②)といえそうです。よって、「引用」にあたらず、著作権者の許諾を得ていない場合には、著作権法に抵触するといえそうです。

 これに対して昨今では、正当な引用かどうかは、伝統的な基準では判断できないとして、「引用の目的、効果、採録方法、利用の方法などの要素を総合的に判断して決めるべきだ」とする議論もあり、それに沿った裁判例も登場しています。

 新しい判断基準は、まだまだ裁判例も少なく、基準が明確ではありません。しかし、キュレーションメディアが、記事の大部分が他サイトの無許諾の引用で占められており、かつ、そのようなサイトにアクセスを誘導することで広告収入などの経済的な利益を得ようとするような場合、新しい判断基準によっても、「引用にあたらない」と判断される可能性が高いでしょう。


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