Wedge REPORT

2010年4月1日

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伊藤公紀 (いとう・きみのり)

横浜国立大学大学院工学研究院教授。1950年福岡県生まれ。78年、東京大学大学院工学研究科工業化学専攻卒業。著書に『地球温暖化論のウソとワナ』(KKベストセラーズ)など。

 では、どのような具体策がありえるか。CO2削減は気候変動と切り離して(デカップリング)、エネルギー政策として長期的展望の下で行うべきである。ダイエットでも、急激にやると体重と一緒に筋肉が減り、免疫も衰える。まず、基礎代謝を増すために、筋肉を付けるのが賢明である。気候変動枠組み条約でも、「各国・各地域の持続可能性を損なわない限りにおいて、温室効果ガスの濃度を安定化する」とある。これは健全なダイエットをしなさい、ということだ。

 気候変動の原因は、地域・局所によって異なる。従って対策も異なってよい。例えば、中国の火力発電から生ずるススやSOX(硫黄酸化物)は、地球規模の気候変動だけでなく、自国の洪水や干ばつにつながっている可能性が大きい。また、呼吸器障害による年間数十万人の死亡の原因となっている。日本としても、その越境汚染は他人事ではない。このような状況下で中国がとるべき道は、CO2削減ではなく、ススとSOXの削減だろう。日本は、優秀な火力発電技術を持っているので、大いに協力・貢献できるはずである。

 IPCCの信頼が失われた今、CO2を環境の単一価値とする世界像は虚像と化した。地域・局所の多様性に基づくWin-Win政策による多様な価値観の共存共栄が、来たる世界の将来像として蘇るべきだ。CO2の呪縛から逃れさえすれば、技術立国日本がそのためにできることは少なくない。

◆ 「WEDGE」2010年4月号




 

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