2024年4月14日(日)

この熱き人々

2016年12月20日

 トモコが呟いた両親のなれそめは、古くて説教臭くて頑固一徹の結果、オニのように怖いという父のイメージを引っ繰り返す。人々が互いに無関心でドライな都会での話ではなく、人との関係がよくも悪くも密でウエットな東北の地方都市。相当、話題になったカップルだっただろう。世間と戦うか世間を飲み込むか。鋼のような強い意志と、すべてを受け入れてそれでも後に引かずに先に進む柔軟さをもって生きてきた両親の姿が、一瞬極彩色で浮かび上がったような。それが、紆余曲折を経ながらお互いの大事なものを見事に合体させた姉妹ふたりの、内に秘めた強さの源なのかもしれないとも思う。

新たな挑戦へ

 今年、東京ハイジは新しい試みに挑戦している。東京に出てきてから1カ所に2年以上住めずに11回も引っ越しをしたというワカバが、初めて6年以上住み続けて記録更新中の二宮町(神奈川県)の広報動画を手がけたのだ。アニメと実写を組み合わせた作品「菜の花畑のニーノ」は、これまた市町村動画アクセスランキングで上位にランクインしている。

二宮町のプロモーション動画

 ワカバは、生まれたばかりの3人目の赤ちゃんを抱いて町をロケハンし、一瞬の映像を求めて何時間も駅に立ち、地元の人々と触れ合って、文化祭のように気持ちが盛り上がったという。外出が苦手のトモコも、引き返したい思いと戦いながら、歌詞を作るために町を俯瞰(ふかん)する山の頂上まで登った。

 「すごく気持ちよかった。登らなければあの曲は書けなかった」

 東京ハイジとしていま私たちに見えているものは、実はほんの一部だけなのだという気がしてくる。東北の深い闇の中に潜むものは、まだまだその本当の姿を見せていない。トモコがゲームの中に登場する音楽ユニット「セラニポージ」の名前で発表している作品「笑うカエル」は、ワカバの絵もまた一味違って、人間や世間のシニカルな面を垣間見せている。

 「直近では、語り部の母に登場してもらって、母が語る話に音楽とアニメと文字を付けたものを作ってみました。ショートショート的なアニメも作りたいんです」

 しかし、世の中はいま見えているものだけを求める。しつけ関係の動画や、「菜の花畑のニーノ」が評判になると、同じようなものを作ってほしいという依頼ばかりが増えていく。それが世間というものなら、きっと東京ハイジはそれを飲み込んで先に進んでいくのだろうと思う。世間に抗して自らの自由を守り貫く姿勢は、両親から受け継いだふたりの遺伝子の中に組み込まれているはずだから。

(写真・佐藤拓央)

●とうきょうはいじ
ささき ともこ/青森県生まれ。千葉大学教育学部音楽科卒業後、ゲームメーカーのセガ・エンタープライゼスに入社。ゲーム音楽の制作を担当し、多くのヒット作を生み出す。2004年よりフリーランスとして活動。
ささき わかば/青森県生まれ。岩手大学人文社会科学部卒業後、広告代理店勤務を経て、2000年からフリーランスに。イラストやテレビ番組のアニメーション制作などを手がける。
公式HP:http://tokioheidi.com/
Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/tokioimoheidi
 


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