タイプに合わせた指導法で人は自ら育つ
さて研修をきっかけに「観察の力」を使い始めたCさんですが、Aさんへの指導方法を大きく変えることにしました。
事細かに教えるスタイルをやめ、Aさんが訪問先で何を感じて、何に気づいたかを先に聞くようにしたのです。聞きながら、Aさんが知っていることとそうでないことをメモに書き出して、「教える一覧表」と「引き出す一覧表」を作成しました。
Cさん自身は言葉で理解したい人ですから、自分の整理のために作成したのです。
そしてAさんには、教える時には身振り手振りを交えて伝えるようにこころがけ、身についたかどうかを確認する時には「実際にやってみて」と、動きを入れた点検を重ねるようにしました。さらに「数字」に関する指示を行う時は、「分かった」で終わらせず、実際にどのような行動をどれぐらい実行したら達成できるかを確認するように、意識してみました。
その成果はすぐに目に見えて表れました。それまでは「はい。」「分かりました。」と答えるばかりだったAさんが、「今のところをもう一回教えていただけませんか?」「一つ確認ですが、これをしたあとにこっちを整えれば大丈夫ですか?」と質問するようになったのです。
言葉を単に「ことば」として聞いていた状態から、自分の体が動くイメージと一致させて学ぶように変わったのですね。営業先からも、「最近よく気が付いてくれて助かるよ」とAさんを評価する声が聞こえてくるようになりました。
伸ばしたければ、その人自身のことを深く広く知ることが大切だということを、AさんとCさんから、私自身改めて学ばせていただいたのでした。
皆さんもぜひ、お子さんの力を伸ばす時、部下を育てる時には、観察することから始めるということを意識してみてください。
最後に、感覚タイプに応じた指導のコツを挙げて今回の話を終えたいと思います。
・「図」や「表」を用いて情報整理の工夫を行いながら指導すると、効率的に学習を進めていくことができるでしょう。
・ポイントの整理を行う際に、自分流に図やイラストを描かせてみて、それを見ながら内容確認を行うと効果的です。
・全体像をちらっと見ただけで、感覚的に把握した気になりやすいので、細部を言葉で確認したり文に書かせたりすることで定着を図ります。
・耳からインプットされやすいので指導時には一つ一つの言葉をはっきりと、内容ごとに区切って伝えることがコツです。
・公式やマニュアルを理解させるには音読を促すと良いでしょう。指導内容をボイスレコーダーに吹き込んで繰り返し聞かせる方法もあります。
・関心が細部に偏って全体像を見失いがちなので、図や目次などを用いて全体と細部の関係を理解させる導きが必要です。
・暗記する際には、身振り手振りを交えて実演させたり、大きく口を開けて復唱させたり、手を意識的に動かすようにして大きな字で記録を残させたりと、体の動きとつなげるように行わせてあげると効果的です。
・感覚でものごとをとらえがちなので、「数字」「用語」「回数」などについてはしつこく点検する方が良いでしょう。
・共感から入ることが特に効果的なタイプの人です。
身近な人の「才能」を発見し、ぜひ伸ばしていってくださいね。
次回は「自信の育て方」について、お話ししたいと思います。
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