環境の島
もう一つ大きな狙いにしているのが「環境」。佐渡は、日本においていったんは絶滅したトキを復活させるために、農薬をなるべく使わない農法を広げるなど、「環境の島」を目指している。学校蔵では、「オール佐渡産」を掲げ、酒米は佐渡産の越淡麗を100%使用、もちろん水も佐渡の水を使っている。
また、製造にかかる電力を佐渡産の自然エネルギーで賄うことを狙っており、学校のプール跡に太陽光パネルを設置、発電を始めた。運動場跡地にも増設中で、将来はすべて再生可能エネルギーで酒造りする計画だ。
「もうターゲティングは止めました」と尾畑さんは言う。狙うべき顧客の属性を決めて商品開発や宣伝広告するマーケティングの一般的な手法で、規模拡大を狙うのならば必ず採用するといわれるものだ。そうではなく、自分たちが作りたいものを作りたい方法で作るというのである。
尾畑酒蔵のモットーは「四宝和醸」。四つの宝とは酒造りに不可欠な「米」「水」「人」の3つに、「佐渡」を加えた4つ。
その和をもって醸すという意味だ。佐渡ならではの原材料を使い、佐渡の良さを知ってもらえば、ふるさとの活性化につながっていく。「酒造りは地域創り」というわけだ。
尾畑さんは、国際化の波によって、日本らしさの追求が進むことで、農業が振興され、それが地域の活力につながっていくという循環を考えている。というのも、酒蔵に戻っていつか取り組みたいと思っていたのが、海外市場の開拓だったからだ。