来年上場が予定されるサウジアラムコの時価総額は2兆ドル(約220兆円)とされている。これは世界の時価総額1~3位であるアップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフトを合計した額を上回り、トヨタ自動車の約12倍に相当する。
この「史上最大のIPO(新規株式公開)」をめぐって、世界の証券取引所が火花を散らしている。IPOはサウジ証券取引所のほか2~3カ所で実施する予定で、ロンドン、トロント、「アジア」などが有力候補とされる。
なお、ニューヨークは証券取引委員会が帳簿記載上、厳格な埋蔵量の開示規則を有するほか、米国の2001年の同時多発攻撃に関して外国政府への損害賠償請求を可能にする「テロ支援者制裁法」の影響もあり、外れる可能性がある。
この「アジア枠」を巡る東京証券取引所のライバルが中国の香港、上海、深圳の証券取引所である。東証に上場している外国企業は減少の一途をたどっており、1991年の127社をピークに現在は5社にまで落ち込んでいる。東証にとって、サウジアラムコ上場誘致合戦は、「単なる一外国企業の上場」という話にとどまらず、外国企業の上場減少食い止め、V字回復の切り札、国際金融センターの座を巡る、負けられない戦いなのである。
今年3月、サウジアラビアの国王が、46年ぶりに来日した。国王と一緒に日本を訪問したサウジ証券取引所のCEOが日本取引所グループ(JPX)の清田瞭CEO、東証の宮原幸一郎社長と面会し、両取引所の連携関係を進める覚書に調印した。
4月には宮原社長がサウジを訪問し、サウジアラムコに東証上場の魅力を直訴するなど、攻勢をかけている。昨年9月にムハンマド副皇太子が来日した際、安倍首相自ら東証への上場を依頼したり、世耕経産大臣が昨年10月にサウジを訪れて要請したりするなど、国としても東証上場を支援している。
サウジアラムコ役員会は5月10日に上海で会合を開く。中国では7年ぶりの開催で、中国の投資家の関心を集めたい意向が透けて見える。ライバルたちもサウジアラムコ誘致へ向けて攻勢をかけており、サウジ側も東証一本に絞るつもりはさらさらないだろう。