The world’s richest people per capita were becoming the world’s most murdered. The press later described the killings as being as “dark and sordid as any murder story of the century” and the “bloodiest chapter in American crime history.”
「一人当たりの財産が世界の中でもっとも豊かな人々が、世界の中でもっとも多く殺人事件で命を落とす人々になっていた。新聞は後年、その連続殺人を『今世紀のいかなる殺人事件よりも邪悪で卑劣だ』と表現した。『アメリカの犯罪史におけるもっとも血なまぐさい一章だ』とも報じた」
しかも当時のアメリカ社会では、オセージ族の連続殺人が注目を集めた。不謹慎な話だが半ば娯楽として殺人事件のニュースが人気を呼んだ。
Despite the brutality of the crimes, many whites did not mask their enthusiasm for the lurid story.OSAGE INDIAN KILLING CONSPIRACY THRILLS, declared the Reno Evening Gazette. Under the headline OLD WILD WEST STILL LIVES IN LAND OF OSAGE MURDERS, a wire service sent out a nationwide bulletin that the story, “however depressing, is nevertheless blown through with a breath of the romantic, devil-may-care frontier west that we thought was gone. And it is an amazing story, too. So amazing that at first you wonder if it can possibly have happened in modern, twentieth-century America.” A newsreel about the murders, titled “The Tragedy of the Osage Hills,” was shown at cinemas.
「残虐な犯罪にもかかわらず、多くの白人たちは臆面もなく、ぞっとするようなストーリーに熱中した。オセージ族インディアン殺害の恐るべき陰謀スリラー、とレノ・イブニング・ガゼット紙は銘打った。古き開拓時代の無法な西部がオセージ族殺人の地に今なお残る、との見出しのもと、ある通信社は全米に速報を送った。ストーリーは『とても重苦しいが、それにもかかわらず、われわれがもうなくなったと思っているロマンチックで無頼な西部開拓時代の息吹に満ちている。また、とても驚くべきストーリーだ。あまりにすごいので、現代の20世紀アメリカでこんなことが起こりうるのかと、最初は信じられないほどだ』と。『オセージが丘の悲劇』と題したニュース映画は映画館で上映もされた」
信頼できる警察が身近にない
しかも、住民を守る警察組織は貧弱で、そもそもインディアンを守るという意識もない。20人以上が殺されて捜査に乗り出したFBIも、アメリカ全土に目を光らせる捜査機関としての権威を高めるという政治的な目的のもと動いていた。
当時のフーバー長官の目論見どおり、FBIはオセージ族連続殺人事件を一応の解決に導く。本書では、その後のFBIについて特に解説しない。ご存知のように、フーバーは1924年から72年まで計48年にわたり長官の座に居座り、違法捜査にも手を染め、スキャンダル情報を集めて政治家や著名人たちの弱みを握り、政財界に影響力を行使したのは今では有名な話だ。
トランプ大統領が突如、長官を解任し話題となっているFBIだが、少し昔を振り返ると、政治的な色彩が濃い成り立ちの歴史を持ち、しかも一個人が自分の地位を守るため長期にわたり支配を続けた、ある意味とんでもないガバナンス体制を持つ捜査機関だった。その歴史を見る限り、FBIを正義の捜査機関として神格化するのもいかがなものかと思う。