2024年12月23日(月)

70点の育児入門

2017年6月22日

質問:暑くなってきたので熱中症が心配です。どうすれば防げますか? 熱射病や日射病という言い方も聞いたことがありますが、それぞれ違いはあるのでしょうか?

答え:体温調整のはたらきが発達していない小さい子ほど注意が必要です。予防には室温や衣服の調節、こまめな水分摂取を。

答える人 石橋涼子先生(石橋こどもクリニック院長)

石橋涼子(いしばし・りょうこ)
東京大学医学部卒業。大学での研修の後、NICU、総合病院、障害児施設などに勤務。1996年からまつしま産婦人科小児科病院(現・まつしま病院)小児科部長、2005年1月に東京・江戸川区小岩に石橋こどもクリニックを開院。

 日射病も熱射病も「熱中症」の別名と言えばいいでしょうか、かつては重症の熱中症を熱射病と呼んだり、とくに直射日光に長い時間当たっていた場合に出る症状を日射病と呼んだりしていました、現在は統一して熱中症と呼ぶのがふつうです。

 人の体内では常に熱が発生しており、同時に皮膚の表面から余分な熱が捨てられて、体温のバランスが保たれています。温度の高い環境などでこのバランスが崩れた結果として起きる様々な症状をまとめて「熱中症」と呼びます。

 身体の熱を奪うのに重要な役割を果たしているのがまず「汗をかくこと」です。水は蒸発するときに、その周囲の熱を奪う作用(気化熱)があります。汗の蒸発が皮膚とその周囲の空気から熱を奪ってくれるので、身体を冷ましてくれるのです。

 もうひとつは、身体の表面の血管が拡がることで、外気温が体温より低い場合は、ここから熱を逃がすことができます。

 乳幼児は、汗をかく機能があまり発達していないので、体温調節には後者のはたらきに頼る部分が大きくなります。そのため、窓を閉めた自動車や、締め切った部屋など気温が体温と同じかそれより高くなるような状況では、身体の熱を逃がすことができず、むしろ広がった血管からさらに熱が入ってくることになり、簡単に重い熱中症になってしまいます。

 ですから小さい子ほど、室温を適温に保つ、通気性がよく汗を蒸発させやすい素材の服を着る、こまめに水分を摂らせるなどの対策が必要です。炎天下の外出はなるべく避けたほうがよいでしょう。またベビーカーや身長の低い子どもは、舗装道路からの輻射熱もおとなより強く受けています。つまりおとなの体感よりも熱にさらされている、ということを頭に入れ、なるべく涼しい時間帯に日陰を選んで歩く、涼しい場所でこまめに休憩する、といったことも心がけてください。

 4~5歳にもなれば、汗をかく機能もだいぶん発達してきますが、遊びに夢中になると水分補給を忘れがちですので、こまめに声掛けして水分を摂らせるようにしましょう。また、スポーツなどで大量に汗をかいた場合には、水だけでなくナトリウムも体外に流れ出てしまうので、スポーツドリンクや経口補水液などで塩分補給をすることも必要です。

 熱中症予防については、日本気象協会のサイト「熱中症ゼロへ」がわかりやすくまとまっていますので、ぜひ参考にしてください。

 熱中症の症状には、Ⅰ度(現場での応急処置で対応できる軽症)、Ⅱ度(病院への搬送を必要とする中等症)、Ⅲ度(入院して集中治療の必要性のある重症)まで重症度が分類されています。

*環境省『熱中症になったときにはⅡ』(PDF)
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/2-1.pdf

 暑い環境でめまいやたちくらみ、吐き気などがあった場合は日陰の涼しいところに連れていき、ボタンやベルトを緩めて休ませながら、水分を補給してください。水分を摂ることができ、元気になれば心配はありませんが、水分が摂れない、あるいは症状がよくならないようならすぐに病院に行きましょう。日陰で休ませているときも必ず付き添って、意識障害やけいれんなどを見逃さないように注意してください。

  
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