もし日本が中国国内のこうしたモンスターを揺り起こし、共産党がそれに応えざるを得ない状況、もしくは別の政治勢力にとって代わられる状況に追い込まれたとき、日本はそれに立ち向かう具体的な方法と覚悟を本当に持っていたのだろうか。
共産党政権は少なくとも現状を見る限り、尖閣諸島の日本の実効支配と中間線を暗に認めていると考えられる。繰り返しになるが、日本がすべきことはこの現実を固めて行くことだ。その意味で船長の逮捕は中国に対する十分なメッセージとなったはずだ。中国を取材して感じたことは、この対立がむしろ共産党政権にとって大きなダメージとなったということだ。
今後の明暗を分ける日本の戦略とは?
この点は広く日本人が事件に関して感じていることと異なるはずだが、中国が日本の反応に本当に焦っていたことは、丹羽大使に抗議する人物の位を次々に上げていった、あの首をひねりたくなるような対応や、ある種みっともないほどヒステリックな言葉で抗議し続けた姿勢にも表れている。
このエキセントリックな抗議は、船長が帰国した後も続いているが、もとより賠償や謝罪が日本から引き出せるとは考えていないはずだ。日本はこうした声を聞き流しながら、事態がクールダウンするのを待って、平常時にいかに戦略を持ってこの問題に対処できるか。今後の明暗を分けるのはその点だろう。
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◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜
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