2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2010年10月12日

 副作用は、相手に対して強いコミットメントを示す場合にも気をつけなければなりません。コミットメントを示すこと、つまり毅然とした態度は相手を思いとどまらせるためにはもちろん必要なのですが、大きなコストや犠牲を覚悟しなければなりません。また、過度に強いコミットメントは味方を恐れさせ、離れていくきっかけになりかねません。ですから、正確に現状を把握することが大前提となりますが、その上で、尖閣諸島を含めた大きな見取り図を作り、数十手先まで読んで、その時々に何が最も重要な利益か冷徹に計算を行い、日々の変化に応じて細かな調整を進めることが必要でしょう。すぐに絶大な効果が出る処方箋は見当たらないので、粘り強さが不可欠です。

 当面は、立ち居振る舞いによって、あまり緊張を招かず、力も消耗せずに存在感を大きく見せることが充分に可能です。たとえば、日本が優れている科学技術の分野で、国際社会における日本の役割をアピールしていくことは、とても大切だと思います。

浅野亮氏(同志社大学法学部教授)
1955年生まれ。専門は現代中国政治、とくに中国の対外政策、安全保障問題に造詣が深い。著書に
『中国の軍隊』(創土社)、『中国をめぐる安全保障』『中国・台湾』(共著、ミネルヴァ書房)など。

 ■関連記事
(1)船長釈放を奇貨とする日本の戦 略(富坂聰)
(2)鈍感な民主党に中国が投げた メッセージ(城山英巳)
(3)中国の過剰な自信はどこから来 る(平野聡)
(4)対中経済衝突 本当に日本が不 利?(有本香)
(5)中国の「拘束危険スポット」は こんなにある(平野聡)
(6)尖閣問題は第2ラウンドへ(石平)
(7)中国漁船と対峙する「海猿」の苦悩(富坂聰)
WEDGE OPINION 中西輝政氏に聞く 尖閣問題、日本の3つの喪失

 


新着記事

»もっと見る