中国共産党の第19回党大会が24日、閉幕した。習近平総書記の名を冠した「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」というキーワードが党規約の行動指針に盛り込まれたことが、日本でも盛んに報道されている。この言葉が党大会最大のキーワードだったことは間違いないが、このほかにもキーワードは多数ある。より社会の現実を反映した、中国共産党が言わざるを得なかったキーワードをいくつかピックアップする。
人民のため
中国では今回の党大会のキーワードのまとめ記事がいくつも配信されているが、その中の一つに新華社のオンラインニュースサイトが10月18日に流した「十九大(中国共産党第十九回全国代表大会)報告、習近平の人心に届く19の言葉!」という記事がある。十九大にちなんで「19句の言葉を選び、ネット上の皆さんに供する」という、くだけた感じの記事だ。「新時代」のように、党が伝えたい言葉が上位に並ぶ一方で、人民が求めているだろうと党が考えている言葉も、特に後半部に多く並んでいる。
まず筆頭に来ているのは「中国共産党員の初心と使命は、中国人民の幸福を追求し、中華民族の復興を追求することだ」という言葉。「中国の特色ある社会主義は新しい時代に入った」という言葉は2番目に並べられている。民心に「刺さる」言葉を選んでいるのだから、いくら最大のキーワードとはいえ、時代定義が最初に来ないのは当然だろう。
19句の中には人民と党の一体感を示す言葉が並ぶ。「11、人民の利益を至高の位置に置く」「16、人民が反対し、心から憎むものを、我々は断固防止し、是正する」「18、党は始終人民と共に考え、共に行動する」といった具合だ。党から人心が離れることの危険性を知っているからこそのリップサービスといえる。
すべての人に住める場所を
人民が切に希望していることも挙げられている。たとえば「12、全人民に住める場所を」というのがそうだ。これだけ見ると、何のことだか分からないかもしれない。中国では不動産価格の高騰で、大都市を中心に家を買いたくても買えない状況になっており、その対策をとるという宣言なのだ。
習近平総書記の報告の詳報が10月19日の経済日報に掲載されており、「家は住むものであり、投機対象ではないという位置づけを堅持し、多くの主体が供給し、多くのルートの保障をし、購入と賃貸の併存する住居制度の建設を急ぎ、全人民に住める場所を持たせる」としている。
解説すると、中国では家は基本的に買うもので、賃貸物件にはあまり良いものはないとされている。ただ、家を買うには大金が必要で、そこまでの資本力がない人や、家を買わずに借りたい人のために賃貸市場の拡大が望まれている。また、賃貸能力すらない人に対しては公営の住宅や、賃貸するための経済的な支援が望まれているのだ。
結婚するには家がなければならないという観念が強い中国で、若者にとって新居の高さは大きなプレッシャー。「住」という生活する上での基本の部分の解決は、大きな課題だ。