2024年12月23日(月)

実践者・中村龍太が考える「カシコイ副業」

2018年3月16日

 第五回にリアルな複業を書いてみたが、「逃げ切れない世代」からのリアルな質問に答えていたら、思った以上に文字数を費やしてしまった。今回は、その続き……

中村龍太(複業家・ポートフォリオワーカー) 1964年広島県生まれ。大学卒業後、1986年に日本電気入社。1997年マイクロソフトに転職し、いくつもの新規事業の立ち上げに従事。2013 年、サイボウズとダンクソフトに同時に転職、複業を開始。さらに、2015 年には NKアグリの提携社員として就農。現在は、サイボウズ、NKアグリ、コラボワークのポートフォリオワーカー。2016年「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」で副業の実態を説明した複業のエバンジェリストとして活躍中。

保険、税金はどうしている?

 第二回の記事に書いたように、「雇用形態は片方が正規社員として採用、片方が非正規社員として個人との業務委託契約での採用。社会保険は、正規社員側の会社で受け持ち、税金は、年間20万円を超えた事業所得を得るので、給与所得と事業所得を合算した確定申告をしろ」ということを今も続けている。

 経験上、一番、何が不安なのか? それは、一年目の確定申告までのプロセスだ。最初は、簡単! 個人事業の開業・廃業等届出書や所得税の青色申告をするのであれば、青色申告承認申請書を税務署に申請。青色申告をすると特別控除65万円が受けられる。次の不安は、帳簿をつくること。

 そのためには、手段は大きく2つ。会計ソフトを使うか、丸ごと税理士さんにアウトソースするか? 僕は事業の状況を把握し、そこから経営を学びたいので、クラウドサービスの会計ソフトを利用している。費用は約1,000円/月~だ。会計ソフトを使うと次の不安は、どう費用を仕訳するかだ。

 仕訳のしかたは、今時のクラウドサービスが解決してくれる。僕はfreeeだが、そのサービスにチャットで相談ができる。何も不安になる必要はない。一年やれば、ほぼ使う勘定科目も決まってくるので、あとはルーチンワーク。しかも、最近の会計のクラウドサービスは、銀行やクレジットカード会社の口座と連動するので、仕訳は、AIっぽく、ほぼ自動。僕の場合は、1か月に1~2時間くらい作業をするだけだ。

 最後が、確定申告。これが厄介だ! 本業の給与所得と副業の事業所得を合算する。これは、自分で書類を作ることは可能だが、1年目は、確定申告の時の相談窓口などで、税理士に見てもらった方が早い。2年目以降は、特に事業内容が大きく変わらなければ、前の年を参考にほぼ機械的に作業を進めることができる。とにかくやってみるとそんなに手間やお金をかけずにできるものだ。

複業の短い時間の中でどう成果を出すのか?

 複業での成果は、1つの成果が2つの会社の成果につながることが理想。そんなことができるのか? ……やってみた! 僕の勤めているNKアグリは、リコピン人参「こいくれない」という機能性表示食品の野菜を、北は北海道、南は九州までの全国約50の農家さんに栽培してもらっていて、それを買い取り、全国のスーパーに販売をしている。

 その農家さんの収穫時期を予測するために、積算温度のノウハウをもっていたが、全国の農家さんの積算温度をどう効率的に把握するのかという課題に対して、サイボウズのクラウドサービス「キントーン」を利用して全国にセンサーを置くIoTの仕組みを2015年春に提案・構築。自分自身も社員として、そのIoTで人参を栽培。NKアグリでは、収穫時期を予測し、価格の安定、向上に貢献したことを目の当たりにし、かつ、サイボウズでは、僕の役割である農業における用途開発事例を作り高い評価をもらった。

 調子に乗って、その成果を自ら総務省の「地域情報化大賞2015」にエントリーし、みごと、「地域サービス創生部門」で表彰された。1つの成果が2社の成果につながった瞬間である。複業する会社を決めるとき、できれば、最初から引き裂かれない複業をデザインすることが理想だ。


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