――AAは現在どのように運用されているのでしょうか?
川嶋:近年、州法や住民投票で、大学入試や公的組織の雇用で、人種や性を考慮することを禁止する州が増えています。スタンフォードは私立大学ですが、「AAオフィス」ではなく、「多様性オフィス」としています。人種を配慮したAAが違憲とされるリスク増えたので、人種の代わりに、経済的社会的に不利な家庭出身とか、家族内に大学卒がいないとか、不利な地域で育ったとかの要素を配慮するようになっています。州立大学の入試では、高校での成績がトップX%という入学政策もあります。
大学教員については、女性が少ない理工系での女性増加が重要な課題になっています。適切な女性候補者に対する応募奨励や、採否判断にバイアスが入らないよう採用手続きを厳格にしたり、メンターリングや助言による昇進支援をする、というようなことが行われています。
――最高裁判所判事には、トランプ大統領は昨年保守派のゴーサッチ判事の任命に成功しましたが、さらに、今年中道右派のケネディ判事の辞職表明を受け、保守派のブレッド・カバノー氏を指名しましたね。
川嶋:2016年2月に保守派のスカリア判事が死亡し、空席が出たのですが、オバマ大統領が指名した候補者は、共和党多数の上院は司法委員会での公聴会の開催を拒否して葬り、1年間は欠員のまま8人の法廷でした。そのため、4対4で、重要な訴訟で決定を下せないケースも生じました。トランプ大統領は、17年4月に、この空席に保守派のゴーサッチ氏の任命に成功しました。前任者も保守派だったので法廷の構成に大きな変化はありません。
しかし、今年7月末に中道派のケネディ判事が辞職したことで、トランプ大統領は、2人目の最高裁判事任命の機会を手にしました。間髪入れず、保守派のカバノー判事を指名。この任命に成功すれば、法廷は完全に右傾化します。
また、リベラル派のギンズバーグ判事(85歳)とブレイヤー判事(79歳)はともに高齢で、トランプ在任中に辞職した場合、後任に保守派の判事の任命に成功すれば近年稀に見る保守法廷の誕生となります。これは非常に大きな社会的インパクトをもちます。アメリカでは、最高裁判決が、価値規範に大きな影響を与えます。だからこそ、大統領は、自分の考え方に沿った判事を任命しようとし、反対派はそれに反対し対立することがままあります。
――そもそも最高裁判事は、どのように任命されるのですか?
川嶋:最高裁判事は、大統領が候補者を指名し、上院の承認を得て、任命します。しかし、ゴーサッチ氏の承認時には、共和党議員52人、民主党議員48人だったので、「3分の2の承認」から「過半数の承認」へとルールを変更して、承認しました。任期の期限がなく、本人が辞職するか、亡くなるまで、30年以上の就任もあり、長期的に社会の動向に影響するので、その任命は著しく重要です。
今後、カバノー判事の任命について、民主党は中間選挙で上院で過半数となることを期待し司法委員会での審議を選挙後まで遅らせようとしていましたが、大統領と共和党は共和党過半数を維持している中間選挙前に承認へとこぎつけるため、公聴会を9月に開催するよう決めました。