オトナの教養 週末の一冊

2018年9月21日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――中露と近い朝鮮半島への影響もあまり大きくはありませんか?

廣瀬:韓国への影響はありますね。今年6月にアメリカのトランプ大統領が、金正恩委員長とシンガポールで会談しました。今後、米韓合意を破棄するとトランプなら言いかねません。もしそうなった場合、韓国は中国に飲み込まれる可能性がある。そこで、韓国はロシアへ接近しています。事実、ロシアワールドカップ期間中、ムン・ジェイン大統領は、自国チームの応援という名目でロシアへ飛び、ロシアから北朝鮮、韓国を結ぶ鉄道とパイプライン計画に合意したのを始め、プーチンと話し込み、さまざまな事案で合意に達したと言われています。ロシアとしても、韓国とのディールが結実すれば、朝鮮半島全体にエネルギー、輸送インフラによって影響力を行使できるため、対中、対米戦略の上でも極めて重要な意味を持ちます。

――廣瀬先生は昨年フィンランドに1年間滞在されていたとのことですが、ヨーロッパから見た中露関係とは、日本から見るそれと違うのでしょうか?

廣瀬:フィンランド滞在によって、中露関係に関してより俯瞰的に見ることができたと思います。たとえば、中国に関してヨーロッパの人たちがどのように見ているか。一帯一路のなかで、陸と海のシルクロードの他に、近年では北極圏のシルクロードも入ってきました。3年前に北極圏で現地調査をした時点では、中国の進出に対し好意的でした。しかし、昨年聞いてみると、かなりの割合の人が批判的な意見になっていた。

――ロシアに関してはどうでしょうか?

廣瀬:まず、ロシアはご存知のような広大な国土の国で、モスクワやサンクトペテルブルクなどの主要都市は東欧にありますが、その他の約70%はアジア地域です。

 ヨーロッパの国々のロシアへ対する反応は温度差がある。たとえば、顕著にロシア嫌いな国としては、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国とポーランドが挙げられますが、逆に親ロシアなのが、イタリア、ハンガリー、ギリシャ、キプロスなどです。時期や時のトップによって態度を変えてきたのが、ドイツやイギリス、フランスなどだと言えるでしょう。例えば、イギリスの場合、金融界にロシアの新興財閥が深く関わっているため、以前はロシアに対してかなり配慮しているように見えました。

――他にも、サッカープレミアリーグの名門チェルシーのオーナーは、ロシア人石油王のアブラモビッチですしね。

廣瀬:今年3月に、イギリスで起きた元ロシアの二重スパイの暗殺未遂事件で神経剤ノビチョクが使われたと言われています。事件発覚後、イギリス政府は自国の外交官を引き上げたり、ロシアの外交官を追放したりしたほか、諸外国にも対露制裁を呼びかけるなどかなり厳しい態度に出まして、現在は米国と並ぶ世界で最もロシアに対して厳しい態度をとっている国になっています。しかし、その影響で、アブラモビッチにもビザが下りず、彼の資金によるサッカースタジアム改修計画が頓挫したとも聞いています。

 一方で、イギリスはプーチンと敵対し、ロシアから亡命してきた新興財閥のオーナーたちを匿ってきました。たとえば、故・ボリス・ベレゾフスキーや、ミハイル・ホドルコフスキーなどです。特に、ホドルコフスキーは現在、資金を提供し、ロシアの悪事をジャーナリストに暴かせたりしています。先日、中央アフリカでロシア人ジャーナリスト3人が殺害されましたが、そもそも中央アフリカに行ったのは、ホドルコフスキーが依頼した仕事のためで、仕事中に殺害されたのでした。

――最後に、どんな人に本書を薦めたいですか?

廣瀬:一帯一路やユーラシア連合構想は、日本とも直接関わる問題です。また、近年、北極圏の資源などをめぐり争奪戦が起きています。なかでもロシアが目立ちますが、北極圏以外の国では中国の動きも目立っています。実は、日本も北極圏の問題に積極的に関わっているのですが、そのことはあまり広く知られていない気がします。しかし、中国の一帯一路のようなユーラシアを広く見据えた戦略に対抗していくためには、より広い地域を戦略的に捉えてゆくことが不可欠です。もっと広く地域を見る感覚は、日本人の参考になると思うので、本書がその一助になれば嬉しいですね。
 

  
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