チャイナ・ウォッチャーの視点

2019年1月10日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

海洋における「中国の影響力」の高まり

 ここで付図に目を転じてもらいたい。

米中の拠点 写真を拡大

 すでに中国が押さえているダーウイン(オーストラリア)、バンダルスリムガワン(ブルネイ)、チャオピュー(ミャンマー)、チッタゴン(バングラディシュ)、ハンバントタ(スリランカ)、モルディブ、グワダール(パキスタン)、ドウクム(オマーン)、ジブチ、ハイファ(イスラエル)、ピレウス(ギリシャ)と並べると、その先にアドリア海の最深部に位置する要衝のトリエステが浮かんでくる。昨年6月にイタリアに出現した政権は反EUの立場からG7諸国としては初めて一帯一路への接近を打ち出すともいわれるだけに、トリエステの“陥落”は時間の問題となろうか。

 遥か東のアラフラ海から始まり、ティモール海、南シナ海、インド洋、紅海、地中海東部、そしてアドリア海まで、海洋における中国の影響力は高まりつつある。

 日露戦争が勃発した明治37(1904)年、高瀬敏德は『北清見聞録』(金港堂書籍)を出版し、その冒頭で「第二十世紀に於て世界が當に解釋すべき大問題は、啻に一のみではあるまい。而かも所謂支那問題なるものは、其の最も大なるものに相違あるまい」。「今や北京は殆んど世界外交の中心であるかの觀がある。少なくとも日本外交の中心點は北京である。若しわが日本が、北京外交の舞臺に於て敗を取ることがあるならば、大日本の理想は遂に一個の空想に過ぎない」と主張した。

「第二十世紀」を21世紀に、「所謂支那問題なるもの」を中国問題に置き換えてみるなら、高瀬の主張は現代に通じるように思える。やはり一切の希望的観測を排し、現実に冷静に向き合う必要があるだろう。

  
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