ストックとフローから分析した過去・現在・未来
情報は大きく、StockとFlowに分かれると思います。皆さんも体感しているように新聞と書籍はストック型の情報だと言えます。それから、ラジオが生まれ、テレビが生まれてリアルタイムで分かる動画型のコンテンツなどのフロー型が生まれました。さらにWebサイトが登場して検索エンジンが利用されるようになりました。これはフロー型に見えますが、検索の過程を見ると比較的ストック型だと思われます。それがTwitterになるとストックとフローの両方の要素が含まれています。リアルタイムのツイートはフロー型ですが、13年間蓄積されたつぶやきはストック型の情報と言えます。
それではこの情報がビジネスにどう利用されているのか、複数の事例から見ていきたいと思います。まず、一番多いのは広告への利用ですね、それからマーケティング、ファイナンス、テロのリスクマネージメントにも使われています。実際にCNNが2011年1月25日の反政府デモから始まったアラブの春を事前に察知できたのも、Twitterのヒートマップを利用した結果なのです。当時、アラブにはCNNの特派員がいなかったのですが、ヒートマップの世界地図を見ているとエジプトが赤くなっていることで大量の書き込みがあることが分かり、現地に問い合わせた結果、デモが起き始めているという情報を得て、急遽、特派員を現地に送り込んだのです。このヒートマップは日本ではNHKで使われています。
ヒートマップはデータマイナーという会社が提供するサービスで、Twitter自身が情報を解析することは少なく、専門性のある企業とエコシステムパートナーになってもらうケースが多いです。日本ではNTTデータと提携しています。
経済産業省も注目するTwitterのデータ
Twitterのデータは経済産業省も注目しています。ツイートが経済指標の算出を可能しているのと考えているそうです。野村證券はAIを使ってツイートを分析して株価の上昇と下降の相関関係を調査しています。こうした試みは2017年以降にマネックス証券、SBI証券、カブドットコム証券、大和証券、岡三オンライン証券がおこなっています。例えば口座開設者に対して、話題の銘柄ランキングや株価上昇が見込める銘柄などを公開しています。
また観光スポットの解析にも利用されています。Twitterの書き込みから、北海道の地元の人も知らなかった和菓子の店が海外からの観光客に人気のスポットになっていることが分かるなどしています。また、「食事好き」という話題に絞ったクラスター分析にも使われ、その地域にあるグルメな観光スポットの改善点を探すためにも地方自治体によって活用されています。これは九州の事例だったと思いますが、データをクラスター化して、話題の量が多いか少ないか。ターゲットとした言葉の含まれる割合が小さいか大きいかによって、そのスポットの特性を解析して、今後、どうすべきかを検討しています。
マーケティングではどう活用されているかと言えば、例えばクリスマス。これはTwitterで年間最も盛り上がるイベントになっています。ツイートがスタートするのは9月から10月です。ツイートの数はまだ4〜5万と少ないですが、楽しいイベントとして取り上げられています。これが11月になると焦ってくる人が増えてきます。イルミネーションを一人で見ると寂しいとか、12月になると期待が膨らんできます。直前になると勝ち組と負け組に分かれて喜びと悲しみにわかれてきます。このデータから分かることは、クリスマス商戦は9月からスタートしているということ、また、間違ってもクリスマス直前にみんなで楽しみましょうという提案はやめましょうとか、そんな提案ができるわけです。
Twitterから見たシンギュラリティ
最後に、シンギュラリティということで、Twitterで発信されたシンギュラリティに関連付けされたキーワードをワードクラウドからご覧いただきます。財団、日本、未来、機械、AI、知能、社会などが最も関連性が高いことが分かります。ところが中には、騙す、備える、読むなど感情的な言葉も散見されます。まあ、一つの言葉だけでは判断できませんが、AIとかそういった言葉を考えるときに、同時に人々の感情も考える必要があるんだなと感じました。
Twitterは現在、アイスボンド社と協同で、筋肉が動かなくなる病気を発症した方のために眼の動きだけでツイートできる機能をテストしました。言葉だけななく、今後は映像だとか音だとか、様々な手法での発信ができるようにしていきたいと考えいます。皆さんも何か興味があることや、仕事や研究などをおこなうときに、ぜひTwitterのことを思い出して活用していただきたいと思います。
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