Wedge REPORT

2019年2月25日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)、近著に『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)など。

自由貿易区の中に築かれた中国軍基地

 町の中心部には巨大ショッピングモール、ホテルの建設も行われている。その先を望めば、そこは自由貿易ゾーンに並ぶように一昨年、中国が建設した中国初の海外での中国軍基地が望まれる。万里の長城のような外壁が延々と続き、中の様子はうかがい知ることはできない。

道路の先に中国の軍事基地が見えるが、近寄ることができない。数千人のキャパシティがあるとみられている

 一帯一路という途上国にとっての甘い〝蜜〟は、その国のインフラから、軍事転用可能なインフラへの投資から始める。ましてや、ジブチなどは、自由貿易ゾーンの中に、中国軍基地も含まれているのだ。

 昨年末、ボルトン米大統領補佐官が、中国軍基地が東アフリカの軍事バランスを崩していると警鐘を鳴らせば、現地の西側多国籍軍も中国軍が駐留軍ルールを乱すような動きを見せ始めていると警戒感を強めている。

 その基地近くには石油備蓄基地も出来ている。それに隣接する多用途の岸壁にはそびえるようなガントリークレーンがいくつも並んでいる。その様はいかなる物量でもびくともしないように見える。まさに、この地域はさながら中国租界の様相。ジブチから隔離した独立国家のようでもある。

中国の大規模投資で港湾開発が進むジブチ(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 赤く染まるアフリカ、赤く染まるジブチ。

 巨大経済圏で世界を赤に染めようとする中国。しかし、それに対し、NOをつきつける動き、また巨額な債務が中国の動きを鈍らせ始めている。それは2・2兆円もの鉄道建設の計画を白紙に戻したマレーシア、誰も利用しない空港、高速道路を作り、残ったのは巨額の債務だけとなったスリランカ。一帯一路のモデル国家と言われたエチオピアもGDPの59%という債務に喘いでいる。エチオピアの姿が、明日のジブチの姿ではないと誰が言えるだろうか。

 ジブチ、エチオピアが支え、経済的な成長が著しい〝アフリカの角〟。軍事戦略上のチョークポイントであるこの地域、中国も国家の威信をかけ一帯一路の遂行、軍事基地の展開を考えるはず。ますます、この地域から目を逸らすわけにはいかなくなる。なぜなら、ジブチには自衛隊の拠点があり、シーレーン防衛も含め、日本は紛れもなく当事者だからだ。

独立から40年が経ってジブチの街並みは大きく様変わりした。その立役者はゲレ大統領と中国マネーだ

【前編:アフリカ・ジブチに走る中国式「砂漠鉄道」の正体

現在発売中のWedge3月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「一帯一路」の衝撃 ルポ 中国に飲み込まれるジブチ・エジプト・ギリシャ
PART 1   中国マネーの甘い蜜に麻痺するシーレーンの要衝アフリカ・ジブチ
 1⃣鉄道、港湾、軍事基地 経済と軍事の表裏一体でジブチを飲み込む中国
 2⃣シーレーンの安全をアフリカの空と海から守る 自衛隊「海賊対処」の舞台裏
 3⃣ジブチの礎を支える日本 中国式との差別化のカギは「持続的発展」と「現地化」
 インタビュー  自衛隊がジブチで活動する意義 佐藤正久・外務副大臣
Part 2        「新首都」の建設と経済貿易協力区 水上の要衝・スエズ運河を取り囲む中国
Part 3         欧州の玄関港を"支配"する中国  「トロイの木馬」と化すギリシャ
Part 4         経済回廊でパキスタンを取り込んだ中国が抱える"ジレンマ"
Part 5     肥大化する一帯一路投資 「軌道修正」を図る中国
Part 6        「一帯一路」を「インド太平洋」で無害化

  
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◆Wedge2019年3月号より

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

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