定年バックパッカー海外放浪記

2019年2月24日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの唯一の港湾プロチェはクロアチア領

 3月19日。ディオクレティアヌス城壁で有名な古代ローマ帝国時代から栄えるクロアチアの海港都市スプリットからボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボへ10時間かけてバス移動。途中、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの国土を縦貫する大河ネレトヴァ川の河口の港町プロチェを通過。

 数日前にネウムからスプリットへの自転車移動でプロチェに立ち寄った。プロチェはクレーンが林立して倉庫が並ぶ活発な産業港であった。ネウムからプロチェまでは自転車でも数時間の距離である。

 プロチェのカフェでオーナーに聞くとプロチェの港は旧ユーゴスラビア社会主義連邦時代からボスニア・ヘルツェゴヴィナの唯一の海への連絡ルートとして物資輸送の要になっているという。プロチェはクロアチア領であるが港に出入りしているトラックは全てボスニア・ヘルツェゴヴィナのナンバーとのこと。

 ボスニア・ヘルツェゴヴィナは生命線をクロアチアに握られていることになる。

サラエボは降りしきる雪の中、20年前のニュース映像がフラッシュバック

 午前中バスの車窓から見えてアドリア海沿いのダルマチア地方は穏やかな早春の陽光に輝いていた。プロチェからネレトヴァ川沿いに山岳地帯を上がって行くにつれ重い曇り空に変わっていった。さらにアーチ型の美しい橋“スターリ・モスト”で有名なモスタル市街を過ぎるとみぞれ模様となった。

 午後3時を過ぎると吹雪になった。夕刻首都サラエボのバスターミナルに到着。路面電車が走るメインストリートにも雪が積もっている。自転車に荷物を載せて走り出すとタイヤが雪で滑り、しかも路面電車のレールの溝にハマったりして何度も転倒しそうになった。

 吹雪のなかで銃撃戦が行われていたサラエボ紛争のニュース映像を思い出した。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナを縦貫する鉄道が走れない複雑な理由

 約1時間吹雪の中安宿を探し回り、旧市街の中心部のホステルにチェックイン。一息ついてから受付と観光ガイドを兼任しているアレン31歳とお喋り。

 アレンはボシュヤニク人(ボスニア人)でありイスラム教徒だ。アレンによるとボスニア・ヘルツェゴヴィナは政治的対立からクロアチアやセルビアなど周辺国から様々な圧力(pressure)を受けているとのこと。

 例えばサラエボからプロチェまでネレトヴァ川沿いに鉄道が敷設されているが現在は運行停止となっている。ボスニア・ヘルツェゴヴィナは旧ユーゴスラビア社会主義連邦時代には国土を縦断する鉄道網が完備され、主要物資はアドリア海のプロチェ港から鉄道で内陸部に輸送されていた。

 しかし、クロアチアとの対立でクロアチア領のプロチェの港湾は条件付きでボスニア・ヘルツェゴヴィナは利用できるが、鉄道の接続をクロアチアが拒否しているので物資輸送ができない。それゆえプロチェ港からサラエボなど内陸部への輸送はバス・トラックに頼るしかないのが現状という。

 さらにボスニア・ヘルツェゴヴィナの“トラック・ドライバー組合”が権益を守るために鉄道輸送再開に反対しているという内政問題も絡んで解決の目途が立たないという。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの海岸線が世界一短い“もう一つの理由”?

 アレンにボスニア・ヘルツェゴヴィナの海岸線がなぜネウムしかないのか聞いたところ、驚くべき背景を説明してくれた。

 ロシアは歴史上常に不凍港を求めて南下政策を取ってきた。その一環としてアドリア海の軍事拠点を求めてきた。そして汎スラブ主義を標榜するロシアの手先としてセルビア人勢力は歴史的にボスニア・ヘルツェゴビナに脅威を与えてきた。

 アレンによると、モンテネグロが北大西洋条約(NATO)傘下に入ったことからボスニア・ヘルツェゴヴィナはアドリア海に面した地域をモンテネグロに平和的に割譲したという。ロシア・セルビアの野望を阻止するためにボスニア・ヘルツェゴヴィナはNATO傘下のモンテネグロに海岸地方の領土を譲ったというのだが……。

(注)モンテネグロへの割譲について後日ネットで調べてみたが英文データでも関連情報は得られなかった。識者に事実関係を確認してみたい。

⇒第8回につづく

  
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