したたか者の流儀

2019年2月25日

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(Sean Comiskey/Gettyimages)

 フランスからジレ・ジョーヌの話題が続いている。ジレ・ジョーヌを日本では、おかしなことに“黄色いベスト運動”という訳が付いている。ジョーヌとは黄色という意味だ。ドイツの有名煙草“ゲルベ・ゾルテ”とは、黄色人種という意味だろうか。正確にはジレ・ジョーヌとは黄色いチョッキとなるが、欧州では、黄色はいい意味が少ない。

 アラビア語圏でも同様らしい。時々起こる人質事件でも黄色装束で登場する。そんな、一段引いた黄色を使った市民運動が、フランス中を席巻している。

 たとえば米国で、ガソリン価格の上昇は、人々の不満と政府批判に直結するが、日本でも、山間部の自動車依存度が高いが、ガソリン代と政治に対する不満の相関指数かなり低い。それは日本車の燃費がいいのと、軽自動車の普及で、交通手段としての車の確保は容易であるからだ。

 しかし、米国では、スーパーや学校、病院まで30キロとすれば、ガソリン代は無視できない。友人のエコノミストよると、ガソリン代は出費の10%程度にもなるそうだ。この点も、日本では理解できないことであろう。

 さて、フランスの地方でも、米国と同様なことがいえるのだ。バスも鉄道もあてにできない地区の住人は、防衛策として、燃費の良い、距離の伸びるジーゼル車を選好する。日本でいえば軽自動車ということになる。やや高いが、買ってしまえば丈夫で長持ち、燃費は2倍、燃料代は、5割引とうたわれるディーゼル礼賛が強いのだ。

 かつては戦車が攻めてきたというほどの、激しい音を立てていたが、既に手が打たれて、ほとんどガソリン車とかわらない操作性や乗り心地の乗用ディーゼル車が欧州全体に普及している。

 たとえば、有人のガソリンスタンで、まず聞くのは、「マズットか?」である。ガソリン車に軽油を入れるとエンジンは壊れる。その逆も修復不能になるからだ。

 無人スタンドでは、いくつも但し書きがあるが、日本人旅行者が、GASOIL(軽油)をガソリンだと考えて、レンタカーを壊す事故が多数あるようだ。

 俗語のマズットも、本来は重油という意味であるが、ガソリン(レサンス)以外という意味でよく使う。

 しかし、持続可能な社会をめざすマクロンは、このディーゼル車を減らし、大気汚染を減らすために、軽油の税率を引き上げるしたことから、地方に住む生真面目で、慎ましく生活する人々を多数敵に回してしまったのだ。これが黄色いベスト運動の原点の一つとなっている。

 加えて、フランスでは、事故時に着用が義務づけられている夜間用の小さなキッツアイが付いた黄色い袈裟帯の携帯が義務されている。義務なので致し方なくDIYで買うが、1000円もしない“申し訳品”も売られているが、一応、車の必需品となっていた。

 そこで、知恵者がこの黄色い袈裟帯をつけて抗議活動を開始したところ、さらに工事現場用のチョッキタイプを着てデモに参加する人も増えて、お陰で日本では“黄色いベスト運動”などと、おかしななまえが付いてしまったのだ。

 フランスでは、黄色いお金という言葉もあるが、いい言葉ではない。特に黄色は悲しい。しかし、やっとディーゼル車にのって子供を学校に送り、スーパーに行き、老母を病院に送る、慎ましいフランス人に対して、持続可能な社会、電気自動車が走る社会をめざすために、重油(Mazout)課税強化は、マクロンの机上の論理であったのだろう。

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