2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年4月3日

 論説は、米国が中東における地上軍の介入の時代を終わらせようとしている、と述べている。そして地上軍による介入に代わるものは、海軍による力の投射であるという。海軍の世紀がやってくるとまで言っている。

 地上軍による介入が原則行われなくなるのはその通りだろう。米国はイラクとアフガニスタンで大々的な介入を行い、多大な犠牲を払ったが、それに見合う成果は上げていない。地上軍による介入が割に合わないのは、レジーム・チェンジの後の国造り、治安の維持が極めて困難で、介入の対象となった国が自力で対処できないからである。アフガニスタンがそのいい例だろう。アフガニスタンでは、政府を辛うじて維持していくのに依然として米軍の駐留を必要としている。アラブの春でチュニジアを除いて民主化に成功しなかったのは、独裁者を排除した後の国を管理する能力が無かったためである。

 地上軍の介入の時代が終わるのは別に中東に限らない。しかし、これまでの米国の地上軍による介入の最たるものが、イラク、アフガンと中東であったこと、中東地域は不安定で米国の介入が望まれるような事態が発生しやすいことから中東が特記されている。

 地上軍による介入に代わるものは海軍による力の投射とされるが、論説も指摘しているように、厳密に海軍だけというのではない。空軍、ミサイル、サイバー、宇宙などが含まれる。要するに地上軍以外ということである。これらはいずれもハイテク関連で機動性に富んでいる。論説は中国との戦争は主として海軍とサイバーだろうと言っているが、今後とも大国間の全面戦争は考えられないのではないだろうか。

 なお、中東ではイランに注意を要する。今トランプ政権はイランを厳しく非難し、イラン包囲網を作ろうとしている。トランプ政権がイランを攻撃するのではないかとの憶測が飛び交っている。イスラエルがイランの脅威を盛んにトランプ政権に吹き込んでいる事情もあり、トランプ政権にイラン攻撃をけしかけているのではないかと推測される。もし万一戦争になった場合には、米国の地上軍の派遣は考えられない。海、空軍による空爆、ミサイル攻撃、サイバー攻撃などが行われることになるのだろう。仮にイランとの戦争が始まれば、どこまでエスカレートするか予測がつかない。

  
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