食の安全 常識・非常識

2019年4月18日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。「第三者委員会報告書格付け委員会」にも加わり、企業の第三者報告書にも目を光らせている。

「加工が悪くて生鮮がよい」という考え方に異を唱える畝山さん

フランス人は自然がお好き?

畝山:加工が少なければ少ないほど良い、という考え方だと、「食品は生で食べるのが一番良い」ということになってしまう。加熱だって加工ですから。でも、食品は生で食べるのがもっともリスクが高い。食中毒の危険性は非常に高いです。

 フランスなどヨーロッパでは、未殺菌ミルクが人気ですが、ハイリスクで事故が起きるので、政府機関は「飲まないように」と注意喚起しています。

松永:フランス人研究者って、自然っぽいのが好きですよね。アメリカへの対抗意識がものすごく強くて、遺伝子組換えとか農薬とか、さまざまなものを批判している。科学を歪めている科学者が目立つような印象があります。

畝山:加工が悪くて生鮮がよい、という考え方にはいろいろな意味で賛成できません。生鮮食品をふんだんに食べられる、季節に関係なく新鮮な野菜や果物を食べられる、というのはお金持ちの国なんです。実はそれはとても不自然な状態。寒い国で冬、生鮮野菜なんて自然にはあり得ません。でも、先進国は輸入して食べられるようになり、塩に頼らない保存方法なども発達して、人は健康になり長生きできるようになった。それが人類の歴史です。

松永:結論としては、この超加工食品論文は参考にしなくてよい、ということですね。

畝山:筆者は、社会運動をしているのではないでしょうか。

消費者の罪悪感につけ込む日本のメディア

松永:そんな論文なのに、「超加工食品は悪い」という結果だけをとってきて、日本の医師や評論家などが日本の加工食品批判を展開しています。いくつかの週刊誌が、パンやインスタントラーメン、冷凍食品、レトルト食品やお菓子など、社名や製品名を挙げて批判しました。医学系ウェブメディアなどでも、もっともらしく医師が解説しています。日本の食品の良し悪しなんて、だれも調べていないのに。

畝山:週刊誌を作っている人たちや読者には、便利なことはいけない、という気持ちがあるのでしょうね。消費者にも、手間をかけていないことに対する罪悪感がある。とくに子どもを持っているお母さんたちは罪悪感を覚えやすくて、そこにつけ込む記事になっている、と思います。

松永:週刊誌を一番読んでいる層は、高齢の男性です。若い人たちに「それみろ、ちゃんとしなきゃダメじゃないか」と中高年が言える根拠となる記事は、ターゲットの読者層に歓迎されよく読まれる。だからこそ、週刊誌はこのような記事を掲載し、販売部数を伸ばそうとします。そうやって、情報に大きなバイアスがかけられていることをもうそろそろ、みんなわかった方がいい。

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