World Energy Watch

2019年4月16日

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欧米で相次ぐ原発工費増大

 2月下旬、英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省の関係者、シンクタンク、インペリアルカレッジの研究者と面談し、英国のEU離脱がエネルギー・環境政策に与える影響について議論する機会があった。

 その折に、温室効果ガス削減のためには、再生可能エネルギーに過度に依存するのではなく、原子力と天然ガス発電を組み合わせるのが最も費用を抑制できると研究者からの指摘があったが、一方、ヒンクリーポイントC原発の建設が本格化すれば、コスト増大が明らかになるのではないかとの懸念を述べる研究者もいた。

 フィンランド、フランス、米国で建設中の原発の工費増大が明らかになっているからだ。

 フィンランド・オルキルオト3号機の建設は2005年に開始され、2010年完工予定だったが、未だ工事中だ。当初の建設費見込みは30億ユーロ(約3800億円)だったが、2012年時点で85億ユーロ(1兆600億円)に達した。工事はほぼ終わり、来年には商業運転開始見込みになった。

 フランスのフラマンビル原発3号機の工事は2007年33億ユーロの予算で始まり2012年完工予定だった。工事は継続しており、現在の工費は109億ユーロに膨らんだ。来年前半には商業運転開始見込みだ。

 米国ジョージア州で建設中のボーグル原発3、4号機は、2009年に建設許可を得たが、その時点の工費見込みは140億ドル(1兆5500億円)運転開始予定2016年だった。現在、工費は約2倍に膨らみ3号機の運転開始見込みは2021年だ。今年3月下旬、連邦政府は37億ドルの政府保証を提供することを発表した。連邦政府が原発建設を支援している背景には、トランプ政権のエネルギー政策がある。

風が吹かないとテレビが見られなくなるよ

 3月28日、トランプ大統領はミシガン州の集会に出席したが、「風力発電だと風が吹いてなければ、その夜はテレビを諦めないといけないよ。“あなた、テレビが見たいの”“ごめんね、風が吹いてないよ”」と演説の中で触れた。電力の供給安定強化、送電網の強靭化には石炭火力と原子力が必要とトランプ政権は考えている。いつも安定的に電力供給ができなければ、問題が発生するとの考えだ。

 昨年1月、冬の嵐襲来時には北東部の風力も太陽光もほとんど発電できなくなり、石炭火力などの稼働率を上げることで凌いだ。今年1月末零下30度の寒波襲来時には、太陽光発電設備とバッテリーの効率低下が発生し、風力発電設備では羽への氷の付着、強風による停止などがあり再エネ設備の発電量低下が引き起こされた。

 石炭火力でも石炭が凍り付き給炭機に投入できないなどの事故による停止が報告されているが、原子力発電所は安定的に運転された。発電設備が多様化していなければ、安定供給は難しい。

 州政府レベルでも、原子力発電への支援が行われている。ニューヨーク州、イリノイ州で導入され、ペンシルバニア州なども導入を検討しているゼロ・エミッション・クレジット制度(ZEC)だ。温室効果ガスを排出しない原発からの電気に対し高値の買取を保証するものだ。

 例えば、ニューヨーク州では、二酸化炭素の価格を42ドルと想定することにより上乗せ額が決められている。この制度の目的は原発を維持し供給を安定化させることと、結果として全体の料金を抑制することだ。

 州の電力供給の3分の1を原発に依存するニューヨーク州のZECの負担額は5億ドルだが、同州の温室効果ガス排出目標に原発が寄与し電気料金を引き下げる効果は17億ドルとの試算結果も示されている。ZEC導入を巡る訴訟に関する連邦控訴裁判所の判決文でもZECは電力供給量を増やし、結果として電気料金引き下げに寄与するとされている。

 既存の発電設備に関する支援だけでなく、議会は新技術を伴う小型原子炉に関する支援策を共和、民主両党相乗りで決めている。

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