新規原発支援策を進める米国と脱落する日本
今年1月14日トランプ大統領は、「原子力エネルギー革新及び最新化法」に署名した。米原子力規制委員会の評価基準は過去50年間主流であった軽水炉のために作成されていたが、全く異なる技術を利用する新型炉が登場し、時代遅れになっているとの議員からの声に応えた法であり、審査過程のコスト、審査期間に透明性を求めている。さらに、2028年までに審査過程を技術包含的にすることも求めている。
石炭への支援策では対立する共和党、民主党だが、SMRを主体とする原子力関連新技術支援では両党の足並みは揃っている。昨年9月には、「原子力エネルギー革新能力法」を成立させ、新型炉の開発事業者が負担する審査費用を助成すること等を決めている。米国議会、政府が新型炉への支援を急ぐのは、SMRが次の原子力技術になると見ているからだ。
新型炉に対する助成制度は、英国、カナダ政府も行っている。ロシア、中国も研究開発を進めている。新型炉の特徴は、過酷事故の蓋然性が極めて低くなり安全性が高まること、さらに小さな敷地でも建設可能などの柔軟性があることであり、今までの大型炉に代わる可能性が高いと見られている。
しかし、新型炉の実用化には、まだ時間が掛かり、その間は安全性を高めた大型炉の建設を進めることになる。いま、世界で原発を建設可能な企業を持つ国は、米、中、露、仏、韓、日の6カ国しかない。米仏が建設に手間取る間に、中露は東欧など多くの国で建設計画を進めている。
米が建設に手間取る最新型のAP1000、仏が進めるEPRともに中国は既に完成させ、運転を開始している。米仏と中国の差は、継続的な建設による現場力が蓄積されているかどうかだろう。日本の原発建設は、国内で中断したまま建設も進まない状況だ。
その結果、現場力を失い今後の新型炉を含む開発力を失うことが懸念される。温暖化問題に対処するには当面原発に頼るしかないというのが米英を中心とした国の考えだ。そのためには安全性とコストに優れた技術開発が急がれる。このままでは日本は6カ国の中で置いてきぼりになるのではないだろうか。将来日本の原発新設を中国あるいは韓国が行うこともありえなくはない。
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